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経済・企業 世界経済総予測’22下期

米国の「長短金利逆転の1年半後に景気後退入り」という現象は今回も起きるのか=市川雅浩

 米債券市場では、景気後退の予兆とされる「逆イールド」が発生した。ただ、株価は実際の景気後退まで上昇することが多い。

量的引き締めと金利操作の同時進行で軟着陸を図るFRB=市川雅浩

 米債券市場では今年4月以降、10年国債利回りが2年国債利回りを下回る「逆イールド(長短金利の逆転)」がたびたび発生している(利回りは取引終了時点での比較)。背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が3月の利上げ開始以降、積極的な利上げを継続していることがあり、その結果、将来の金融政策の変化に敏感な2年国債利回りに強い上昇圧力が生じ、10年国債利回りの水準を超えるようになったと推測される。

 逆イールドとは、一般に景気後退の予兆と解釈され、現在多くの市場参加者が、米国の景気と株式市場の先行きに強い懸念を抱いている。そこで本稿では、データが入手できる1978年から2020年までの期間について、米国で逆イールドが発生した際、その後、景気や株価がどのように推移したかを検証する。

 まず、逆イールドと景気の関係を確認する。米国は78年以降、景気後退を6回経験した。具体的な景気後退の期間は、(1)80年1~7月、(2)81年7月~82年11月、(3)90年7月~91年3月、(4)2001年3~11月、(5)07年12月~09年6月、(6)20年2~4月──である。

 一方、逆イールドについては、78年以降に発生が観測された期間は、78年8月~80年5月、80年9月~82年7月、88年12月~90年3月、98年5月~00年12月、05年12月~07年6月、19年8月、であった(いずれも逆イールドが観測された期間であり、期間中逆イールドが続いたわけではない)。

株価はむしろ上昇

 改めて、これらの期間と、景気後退の期間を比べてみると、すべてのケースにおいて、逆イールドの発生が観測された後、しばらくして米国が景気後退に陥っていることが分かる(図1)。参考までに、逆イールドの発生が観測された日から、景気後退入り(景気後退入りした月の1日)までの日数は、単純平均では約539日、すなわち約1年半である。

 次に、逆イールドの発生が観測された日から、景気後退入り(景気後退入りした月の第1営業日)までの間、ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)がどのように推移したかを検証する。具体的に騰落率を計算したところ、(1)が8.4%減、(2)は2.8%増、(3)は35.8%増、(4)は16.6%増、(5)は23.5%増、(6)は9.7%増であった。ダウ平均が下落したのは、六つのケースのうち1回だけで、単純平均では13.3%増である。

 これらの検証結果をまとめると、「米国では78年から20年までの期間、逆イールドの発生が観測された日から、平均して1年半後に景気後退入りする傾向がみられた。しかしながら、NYダウはその間、上昇するケースがほとんどで、平均騰落率は13.3%増であった」ということがいえる。

 直近では、22年4月1日に逆イールドの発生が観測されていることから、過去の傾向を踏まえると、米国経済は1年半後の23年10月1日ご…

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週刊エコノミスト

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