東工大で次世代原発「SMR」計画スタート 海外はすでに盛り上がり=荒木涼子
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次世代原発とされる小型モジュール炉「SMR」の開発競争が国内外で激しくなっている。出資企業には日本のメーカーも。そんな中、東工大でもベンチャー設立に向け準備が進められている。>>>特集「電力危機に勝つ企業」はこちら
中露、欧米の民間企業も開発
「SMRは世界で激しい開発競争に入った。研究を重ね、国産のものを国内や海外に作りたい」。7月に佐賀市であった日本機械学会のシンポジウムで、奈良林直・東京工業大特任教授(原子炉工学)は新たな計画を発表した。奈良林氏によると、既存の原発では難しかった俊敏な出力調整を可能にした「負荷追従運転」で、発電量の変動が大きい太陽光発電などを補完できるという。2050年に脱炭素達成のため、30年から建設を目指す。
まだ概念設計段階だが、コンパクトな設計で原子炉とタービンを一つの建屋に収納▽原子炉を入れる建屋を鉄筋コンクリートから鋼鉄製の船殻構造に変更▽超高層ビルなどの免震ゴム技術を採用──などで、「活断層など個々の立地条件に左右されず同一設計で国内のさまざまな場所に建設できるようにし、量産化で建設費も抑える」ことを目指すとしている。年度内に民間企業などと大学発ベンチャーを立ち上げる予定で、大手機械メーカーや、石油製品製造企業も興味を示しているという。奈良林氏は、「設計をいかに単純化し、部品点数を下げて建設コストを下げられるかが勝負どころ」と話す。
米企業に日揮など出資
日本ではまだ具体的な建設計画こそ表面化していないが、海外では中露が先行し、欧米でも政府による支援策が表明されている。
中国では21年7月、海南省(海南島)の昌江原発内で実証炉「玲龍1号(出力12.5万キロワット)」が着工。世界初の陸上SMR建設とされている。ロシアでは20年5月、国営ロスエネルゴアトム社が世界で唯一の海上浮揚式原発(合計出力7万キロワット)の営業運転を開始。全長140メート…
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週刊エコノミスト
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