来年の広島G7で核セキュリティーサミット開催を=鈴木達治郎
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ロシアによるウクライナ国内の原発への軍事行動と占拠は、世界を驚愕(きょうがく)させた。今こそ戦時の禁止事項強化と、日本のリーダーシップが求められている。
ウクライナ侵攻で鮮明となった核施設防護の課題
過去にも原子力施設である稼働直前の研究炉(燃料装荷前)に対する爆撃(イラクやシリア)はあった。しかし、今回のロシアの稼働中のザポロジエ原発など核施設への攻撃や占拠、つまり大量の核燃料や放射性物質がある原発敷地への軍事行動は世界で初めてで、一歩間違えばウクライナはもちろん、ロシアも含む欧州全体にも汚染が広がる事態になりかねなかった。
二度とないよう、すでに戦時での原発への攻撃を禁止する「ジュネーブ条約追加議定書」(ロシアも批准)への違反行為だと明確にし、さらに原発以外でもリスクの大きい核施設(使用済み燃料貯蔵施設、再処理施設など)への攻撃も禁止するよう、強化が必要だ。
国際原子力機関(IAEA)では、民間が使う原子力施設や核物質の防護策(核セキュリティーと呼ぶ)についてガイドラインを決めているが、軍事攻撃からの防護は対象外だ。今回の暴挙を見れば、対策見直しは必至だろう。
笹川平和財団の核不拡散・核セキュリティ研究会は6月、「ロシアによるウクライナ侵攻:原子力民生利用の諸課題と日本の役割」との報告書を発表。核セキュリティー強化について、日本政府への提言として、3点を挙げた。
どこまで想定するか
まず、想定されている脅威(設計基礎脅威〈DBT〉と呼ばれ、規制当局が作成)が現在のままで十分かの再検討が必要だ。DBTは非公開だが、法律で規定されており、民間企業は脅威への対策が義務付けられている。
例えば、重装備のテロリストにより発電所が「占拠」される可能性はどうなのだろう。露軍は今もザポロジエ原発を占拠。作業員が人質要員となり、軍事要塞化されたとの報道もある。どこまでの「テロ行為」を想定すればよいのか。専門家も交えて検討を始めることが必要だ。
第二に、DBTを超えた脅威への対応策の検討だ。日本では、電力会社は武装警備が許されておらず、各都道府県警の銃器対策部隊や海上保安庁が原発を24時間警備している。だが、原子力の知識を持つ専門部隊「原発警備隊」は、県内に15基もの原発がある福井県警だけだ。他の道府県の原子力施設でも原発警備隊を設立・配備することが望ましい。
また、警察力では対処で…
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週刊エコノミスト
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