ガソリンスタンド 生き残れるのは3分の1?=小嶌正稔
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ガソリン業界は少子高齢化と脱炭素の影響を最も強く受ける。
自家用車減とEV拡大の脅威
石油製品の流通は基本的に国内産業といえる。石油製品流通の起点になるのが、(1)原油を精製する精製会社、(2)石油製品を販売する元売り会社、(3)石油製品を海外の石油会社から輸入する輸入会社だ。石油製品の輸入量をガソリンで見ると、2020年度は7%弱で、93%は国内製油所で精製された製品だ。
石油製品の販売会社は、石油元売り会社(元売り)と呼ばれ、精製と販売を行うENEOS、出光興産、コスモエネルギーグループ、太陽石油の4社と販売のみを行うキグナス石油がある。石油製品は元売り会社から元売り子会社、特約店・販売店などを経由して消費者に届けられる。
石油販売の特約店とは、元売りとの製品供給契約・商標使用契約に基づいて、継続的に取引する会社で、販売店は特約店と供給契約を結び、元売りとは商標の使用契約のみで直接取引がない。この他にも元売りのブランドを掲げず、独自商標で販売するプライベートブランド(PB)がある。ガソリンでは、特約店経由の販売が全体の60%を超え、次いで元売り子会社20%、商社系特約店が12%、JA全農系が約5%、PBが約10%という割合だ(図)。
セルフ登場で大きく変化
ガソリン流通が大きく変化する契機となったのが、1998年のセルフサービス給油所(セルフガソリンスタンド〈GS〉)の解禁だ。従来のフルサービスのGSは、価格もサービスもほぼ横並びだったため、GS間の販売量格差が小さく、元売りの販売シェアを決めるのはGSの数であった。
しかし、セルフGSが登場すると、GS間の販売量格差が広がり、元売りの競争力をGS数だけで測ることができなくなり、元売りと特約店・販売店の関係は変化した。
21年度末のGS数は2万8475カ所で、うちセルフGSは約1万600カ所、セルフ化率は約37%にとどまっている。市場拡大期にセルフGSが普及した欧米では、ほとんどがセルフGSになっている。日本はガソリン需要が頭打ちになり、GSが減少する局面でセルフサービスが解禁されたため、中小の販売店が積極的な投資を避け、フルサービスGSが多く残存した。
全国石油協会の「石油製品販売業経営実態調査報告書」(20年度版)によると、1給油所当たりのガソリン販売数量は、フルサービスGSが53.6キロリットルなのに対し、セルフGSは169.2キロリットルで、3.2倍の開きがある。すなわち、全体の37%を占めるセルフGSが全体の65%を販売。しかもセルフGSの半数は元売りが所有し、元売りが所有するGSのセルフ化率は74%と全体のほぼ倍の比率となっている。
その結果、元売り子会社(直売)の販売比率は、セルフサービス解禁前の97年度末がわずか5.5%であったのが、01年は8.9%、10年には19.4%、20年には22.2%に増加し、流通構造が大きく変化した。一方、一般特約店の販売比率は、セルフ解禁前には83.1%を占めていたが、20年には60.7%に低下している。この中には一般特約店からPBに供給される数量も含まれる…
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週刊エコノミスト
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