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アボットジャパン「FreeStyle リブレ」 糖尿病患者への保険適用が拡大-コロナ禍に対応するアプリの提供も開始-[Economist View]

アボットジャパンが2017年から提供している、持続血糖測定器「FreeStyle リブレ(以下フリースタイルリブレ)」が、インスリン治療を行うすべての糖尿病患者へ保険適用が拡大された。患者の家族や介助者に向けた、血糖トレンド見守りアプリの提供も開始されている。同社メディカルアフェアーズ本部の清水健一郎本部長に、その背景や概要などを聞いた。

アボットジャパン合同会社 ダイアベティスケア事業部 メディカルアフェアーズ本部 本部長 清水 健一郎氏
アボットジャパン合同会社 ダイアベティスケア事業部 メディカルアフェアーズ本部 本部長 清水 健一郎氏

より適切な血糖管理に向け 進展する官民の取り組み

 米国アボット・ラボラトリーズの日本法人、アボットジャパンが提供している持続血糖測定器「フリースタイルリブレ」の大きな特徴は、血糖値が「点」ではなく「線」で見られるようになっていることだと清水健一郎本部長は強調する。

 従来の血糖自己測定器は、指先に針を刺して血液をつけ、その時点の血糖値を測ることができる。それに対し「フリースタイルリブレ」は、500円玉大の丸いセンサーを上腕後部に装着することで、極細のフィラメントが皮下に挿入され、最長で14日間、リーダーをセンサーにかざすだけで持続的に血糖値が測定できるものだ。「これにより、インスリン治療を行っている患者さんが、いつ高血糖や低血糖になりやすいのかなどがわかるようになり、治療に活かすことが可能になりました。特に、これまで知ることができなかった、眠っている間の血糖値もわかるようになったことは、治療や食事のアドバイスをする上で非常に大きいです」と清水本部長は解説する。

 ただ、「フリースタイルリブレ」は、これまで保険適用の対象が、1日に打つインスリン注射の頻度が多い「強化インスリン療法」などの患者に限られていた。それが、2022年4月1日から、インスリン療法を行っているすべての糖尿病患者に拡大されたのである。「つまり、1日に1回でもインスリンを打つ患者さんは保険が適用されますので、医師にとっても患者さんへの説明がシンプルになり、コミュニケーションも取りやすくなったという声が聞かれます」と紹介する。

 また、「フリースタイルリブレ」は専用のリーダーのほか、「フリースタイルリブレLink(リンク)」というアプリを使い、スマートフォンで血糖の数値をスキャンすることが可能で、この4月からはさらに進化。コロナ下の非接触のニーズにも対応し、患者の家族や介助者が血糖トレンドを共有できるアプリ、「フリースタイルリブレLinkUp(リンクアップ)」の提供も開始された。その背景について清水本部長は「低血糖がひどい場合、意識を失うこともあり、家族や介助者が血糖値を共有することで見守りにもなり、患者さんの安心につながります。また、食事内容の調整に役立てることもできるでしょう。もちろん、ご自身の血糖値を知られたくない患者さんもいますので、必要に応じてお使いいただける機能となっています」と話す。

 厚生労働省によれば、日本では糖尿病が強く疑われる人と、糖尿病になる可能性のある予備群はそれぞれ約1000万人いると推計されている。清水本部長は「糖尿病が怖いのは、病気それ自体に加え、失明の原因になったり、腎臓が悪くなって透析が必要になったり、心臓病や脳梗塞のリスクを高めたりすることです。ぜひ、こうしたデジタルヘルスツールも活用し、より適切な血糖管理をしていただきたいと思います」と話し、一人でも多くの人が血糖値と前向きに取り組めるようにしていきたいと思いを込める。

フリースタイル リブレは、センサー(手前)でスキャンしたデータを、リーダー(右)やスマートフォンアプリ(奥)で確認できる
フリースタイル リブレは、センサー(手前)でスキャンしたデータを、リーダー(右)やスマートフォンアプリ(奥)で確認できる

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