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経済・企業 2025年の経営者

間接業務の請け負い伸ばし再成長――南部靖之・パソナグループ代表

Photo 平岡仁:大阪市此花区の大阪・関西万博会場予定地で
Photo 平岡仁:大阪市此花区の大阪・関西万博会場予定地で

パソナグループ代表 南部靖之

なんぶ・やすゆき
 1952年生まれ、兵庫県出身。県立星稜高校、関西大学工学部卒業。関大卒業直前の76年2月に人材派遣会社、テンポラリーセンターを設立。93年にパソナに社名変更した。2007年に持ち株会社体制のパソナグループに移行。72歳。

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

>>連載「2025年の経営者」はこちら

── パビリオンは完成に近づいていますが、大阪・関西万博に出展する狙いは。

南部 パソナグループは「いのち、ありがとう。」をコンセプトに掲げ、iPS細胞から作った「iPS心臓」などを展示します。人々が健康になる、自然を豊かにするためのテクノロジーの進化を実感していただけると思います。

── 万博自体には何を期待しますか。

南部 阪神淡路大震災から30年の節目の年なので、関西がこれだけ元気になったよと報告する場でもあると思う。万博を通じて世界中に感謝の気持ちを伝えて恩返しをしたいですね。もちろん新たな関西経済の発展のきっかけになればいいと思います。

── 本社機能の淡路島への移転から4年近くたちます。現状で本社機能1300人を含む約2000人、全体の5分の1が淡路島で働いているということですが、その効果をどう見ていますか。

南部 最初は総務、経理、経営企画といった管理部門だけ考えていたんですが、今では営業部門にも広げています。コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んだおかげでリモートワークが可能となり、営業部門は約150人います。また、DX化が進んだことで本社機能人員は当初想定より15%ほど少なく済んでいます。

 効果という意味では、東京では得られないような優秀な人材を、働く場としての淡路島で得られています。本社機能の15%程度は現地採用です。AI(人工知能)の人材もいます。介護離職されている方が神戸や四国にも多いのですが、この方たちが神戸から通う、あるいは淡路島に住んで週末家に帰るという形で働いています。

淡路島勤務希望多く

── 淡路島へ移りたい希望者が社内に多いそうですね。

南部 多いです。住みやすく釣りやサーフィンなど趣味を楽しめることもあります。大阪や和歌山など近隣から移るのは禁止していたのですが、ちょっと窓口を広げようかと思っていますから、(移住が)増えてきますね。

── 淡路島に拠点を置く問題点はありますか。

南部 場所によっては携帯電話の電波が途切れるとか、島内の交通の便の悪さ、産婦人科が遠いとかいろいろあることはありますが、それぞれ改善に向かっています。

── 成長が見込める(健康や幸福を意味する)ウェルビーイング事業を伸ばす方針だと。

南部 いわゆる「未病」対策などです。ファンドを作って新しい産業を創造しようと考えています。

── 25年5月期決算の売上高で企業などの間接業務を請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業が初めて派遣事業を上回りました。「人材派遣のパソナ」から大きく変わったということでしょうか?

南部 BPOは米国で盛んだったので(日本でも広がると考えて)15年くらい前から力を入れていました。自治体から請け負っていこうとやり始めました。

── 将来的な売上高の割合のイメージは。

南部 やはりBPOの方がこれから伸びるのではないでしょうか。

── 株主還元について。福利厚生代行のベネフィット・ワン株の売却に伴う一時的な利益を踏まえて24年5月期から5年間、各期末に60円ずつの特別配当を決められました。

南部 配当は安定的に出していこうという考えです。これまでもすごく利益が出たからたくさん出す、あるいは利益があまり出なかったから出さないということはしていません。

── 足元の業績で利益は踊り場のような格好になっていますね。

南部 ベネフィット・ワンを売却したことが利益に影響している。新型コロナ禍が収束して関連ビジネスが減ったということもある。これらに代わるようなものを考えていきます。BPO、ウェルビーイングで頑張っていきたいなと思っています。

── 海外展開についてこう進めたいという考えは。

南部 当社はもともとあまり海外に力を入れてこなかったのですが、国際情勢をみると今、米国も中国も(積極的に打って出るのは)難しいと思いますね。

── 創業からまもなく50年ですが、今後の50年を展望する時、企業理念の「社会の問題点を解決する」がカギになってきますか。

南部 これから後継者の時代になっても社会の問題点を解決する視点は持ち続けてほしいですね。社会の問題ってしょっちゅう変わるんですよ。神戸や東北で大地震が起きればその対応ということがありますね。

── 今話に出た後継者について考えはまとまりつつありますか。

南部 ないですね、創業者は死ぬまで創業者だとも思っています。楽をしようとか逃げようとかは一切ありません。

横顔

Q 30代はどんなビジネスパーソンでしたか

A 人と会って話をするのが好きで毎週2回勉強会をやっていました。ソフトバンクグループの孫正義さんや安倍晋三さんらと会ってました。

Q 最近買ったものは

A 生まれて初めて時計を買ったんです。腕時計。創業50年のお祝いで創業メンバーへのプレゼントに何がいいかという話で時計が欲しいと言われて僕も買ったのです。

Q 社長業とは

A 創業者と言ってもいいかもしれませんが、リーマン・ショックなど会社が本当に困った時に出ていってきちんと対応することでしょう。


事業内容:人材派遣、人材紹介、キャリア支援、BPO(業務の外部委託)サービス、地方創生事業など

本社所在地:東京都千代田区

創業:1976年2月

資本金:50億円

従業員数:10001人(2024年5月末、連結)

業績(24年5月期、連結)

 売上高:3567億円

 経常利益:71億円


週刊エコノミスト2024年12月31日・2025年1月7日合併号掲載

編集長インタビュー 南部靖之 パソナグループ代表

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