地域経済の衰退が招く鉄道衰退 大都市圏も人ごとではない=土屋武之
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シャッター通りに象徴される地域の衰退に新型コロナウイルス感染症が追い打ちをかけ、鉄道業界全体に厳しい逆風が吹いている。
ローカル線の存廃を分ける自治体の財政=土屋武之
極限まで進んだローカル線の利用客減少に続いて、災害による不通、新幹線の並行在来線問題も絡んで、北海道では札幌都市圏を除くJR北海道の路線の多くが危機に瀕(ひん)している。すでに日高線の鵡川(むかわ)─様似(さまに)間などが廃止。函館線長万部─小樽間が北海道新幹線の札幌開業と同時の廃止が決まるなど、鉄道廃止の時代に突入している。
ここのところローカル線への風当たりは全国的に強い。JR北海道に続いては、JR東日本やJR西日本が利用客数や収支係数など実情を次々に発表。「地域交通網のあるべき姿」を探るべく、地元との協議を始めるとしている。各社は廃止が前提ではないとしているものの、地元の警戒心は強い。
少子高齢化により、最大の顧客である高校生の減少がローカル線では最大の打撃だ。少子化は地域経済の衰退、ひいては若年層人口の減少が如実に表れやすい。昭和の後期、北海道では炭鉱の閉山によって経済的な支えを失い、人口数万人の町が、またたく間にゴーストタウン化した。令和の今では、それが緩やかに、かつ北海道を越えて全国的に発生している。多くの商店が店を閉める“シャッター通り”が各地で見られるようになったのも、地域経済の衰退から鉄道の衰退、さらなる経済への影響との悪循環が発生していることを象徴している。
さりとて鉄道存続への特効薬はない。イベント開催などによる利用促進策も一時的なカンフル剤に過ぎない。にぎわいは創出されたとしても、直接的な経済効果は実は薄いからだ。例えば、列車で30分もかからない函館線余市─小樽間の、高校生の通学6カ月定期券は5万3060円。100人が半年間通えば、約500万円の確実な収入がある。半年に1度のイベントで1000人が集まっても、大人から子供まで1人5000円も使うかは分からない。
地元負担で分かれる判断
こうしたローカル線の危機は急に訪れることもある。東日本大震災を代表例とする天災に見舞われた時だ。地域全体が壊滅的な状況の中で、自治体は難しいかじ取りを強いられる。
阪神・淡路大震災で被災した鉄道は大都市圏の通勤・通学路線として不可欠な存在であったため、鉄道会社が自ら復旧に当たった。しかし、もともと経営的に苦しいローカル線はそうはいかない。そもそも、地域にとって鉄道が必要かどうかを議論するところがスタート地点だ。
このため、対応は極端に分かれる。高波の被害で廃線に追い込まれたのが日高線。線路用地を…
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週刊エコノミスト
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