新幹線が足かせのJR 私鉄は不動産が好調=梅原淳
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厳しい経営が続く鉄道各社は、事業構造によって差が出てきている。
業績は回復基調にあるもコロナ禍前に及ばず=梅原淳
JR旅客会社6社、大手私鉄14グループの2021年度(22年3月期)決算を見ると、コロナ禍から立ち直ろうとするなかで明暗が分かれた。
表のとおり、各社とも21年度の営業損益は連結、鉄道事業とも前年度を上回ったが、まだコロナ禍直前の19年度の業績を下回ったままだ。
連結を見ると、JR各社のうち営業黒字はJR九州、JR東海の2社のみと厳しい内容となった。これに対し大手私鉄は、西武ホールディングス(HD)、京成電鉄の2社を除く12社が営業黒字と好調であった。
一方、本業である鉄道事業は、JR全社が営業赤字、大手私鉄も営業黒字は東武鉄道、名古屋鉄道、近鉄グループHD、京阪HD、阪急阪神HDの5社だけで、ほかは軒並み営業赤字となった。
在来線の収入は回復傾向
JR各社の鉄道事業の不調は、定期外旅客、殊に新幹線を中心とした長距離列車の利用が低迷したままだからだ。新幹線の営業を行うJR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の5社が21年度に上げた新幹線の運輸収入は合わせて1兆900億円だったが、19年度の2兆3279億円の47%に過ぎない。
新幹線の利用が低調な結果、運輸収入に占める新幹線の比率も19年度の55%から21年度は46%へと下がった。特にJR東日本は32%から23%へ、JR西日本は52%から43%へと大幅に低下している。
他方で在来線の運輸収入は順調に回復しつつあり、19年度の1兆9047億円に対して68%となる1兆2972億円まで戻した。特に定期券利用者による運輸収入は21年度が5425億円と、19年度の7024億円に対して77%まで回復している。回復率はJR北海道の92%が最も顕著で、以下JR九州が86%、JR西日本が84%、JR東海が83%、JR東日本が74%と続く。
いつ乗ってくれるか分からない新幹線の利用者よりも定期券利用者が戻ってきてくれるほうがありがたいと考えたくなる。だが、JR各社の通勤定期の割引率は1カ月で50%と、大手私鉄の35%前後と比べると著しく大きい。定期券での利益率は低く、金額によっては赤字となるケースも考えられるからである。
新幹線は運賃に加えて特急料金が得られ、しかも割引の少ない定期券以外での利用が大…
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週刊エコノミスト
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