次世代の憂鬱 募る共産党体制への失望とあきらめ=城山英巳
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「頑張っても報われない現実」に嫌気が差し、競争を忌避する若年層。習近平指導部が危機感を募らせている。
就職難にゼロコロナ 躺平(タンピン)族(寝そべり族)が出現
8月2~3日、ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、中国の習近平共産党総書記(国家主席)は、弾道ミサイルを次々と発射し、台湾を包囲する異例の大規模軍事演習を強行した。兵器や装備品のハイテク化は進むが、何といっても演習を支えるのは人民解放軍兵士。しかし習指導部は、若者の軍離れという深刻な問題を抱えている。
若年層の失業率2割
中国の若者たちは、米国や日本など西側民主主義陣営の中国批判に反撃する中国外交部報道官らの「戦狼外交」に喝采し、インターネット上を見る限り、ナショナリズムと大国意識に酔いしれているかのようである。しかし人民解放軍に入隊し、共産党のために命懸けで「闘争しろ」と言われても沈黙してしまう。ネット上で「台湾を解放しろ」「米国や日本をやっつけろ」と、鬱憤を晴らすように盛り上がるが、就職さえできない現実社会への不満の憂さ晴らしという側面もある。
特に新型コロナウイルス完全封じ込めのため、私権無視の隔離を強行し、抵抗する市民に暴力を加えてでも従わせる「ゼロコロナ政策」の本質を目の当たりにした若者は、共産党体制への失望とあきらめを強めている。
19.3%──。中国国家統計局が7月15日に発表した「6月時点の16~24歳失業率」に注目が集まった。ちなみに25~59歳の失業率4.5%の4倍以上である。2月は15.3%だったから、最大の経済都市上海で3月末から2カ月続いたロックダウンの影響で求人がいかに大幅に縮小したかを表した形だ(図1)。
中国政府が2000年代以降、経済成長に貢献できる高度人材を求め、大学生数を増やし続けたことも背景にある。00年に95万人だった大学卒業者(大学院など含む)は、22年に1076万人(図2)に達し、前年同期比で167万人も増加し、共に過去最高となった。中国メディアが求人大手「智聯招聘」のデータとして伝えたところでは、4月中旬時点での学生の就職内定率は46.7%。前年同期から約16ポイントも低下した。
1989年に学生らの民主化運動が武力弾圧された天安門事件で、学生は80年代の急速な改革開放のひずみの中で顕在化したインフレや就職難、腐敗などに対する不満を強めた。経済改革だけでなく政治改革も進めないと国は変わらないという憂国意識を強め、体制に批判の矛を向け、民主化運動が起こった。
今は誰もが大学に進学できる時代になったが、「卒業即失業」が現実だ。それは、習近平氏の母校・清華大学、李克強首相の北京大学など名門大学の卒業生も例外ではない。
不満を抱えた若者たちが向かう先はどこなのか。第一に、安定志向の学生に人気の公務員や国有企業の職だ。しかし公務員試験受験者は22年、212万人と過去最高となり、倍率は68倍に上る。
第二は、就職氷河期を回避し、就職に有利な学位を得られる大学院への進学だ。修士課程入試の志願者は11年には151万人だったが、22年には3倍の457万人に達し、前年より8…
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週刊エコノミスト
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