日本経済の最大脅威は中国との「デカップリング」=田代秀敏
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自動車、ハイテク、ファッション、哺乳器、食品……。日中両国は一大経済圏を形成している。
経済安保のため、新総書記の国賓訪日を実現を
「習近平主席と手を携えて日中新時代を切り開いていきたい」──。そう語った安倍晋三首相(当時)は、大阪で開催の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)へ出席のため来日した中国の習近平国家主席に、国賓としての再来日を招請した。凶弾に倒れる3年前の2019年6月27日のことであった。
疾風怒濤の50年
日本と中国とが国交を正常化した1972年、中国の国内総生産(GDP)は日本の約34.5% の規模であった。76年に毛沢東が死去して文化大革命が終了し、78年に鄧小平が権力を奪取すると、基本路線を「自力更生」から「改革開放」へ大転換した。
大転換の直前、日中平和友好条約の批准書交換のために訪日した鄧小平は、東海道新幹線に乗り、「速い。とても速い。後ろから鞭で打たれているような速さだ。これこそ我々が求めている速さだ」と話し、中国経済の超高度成長を宣言した。実際、1980~2021年に、中国の実質GDPの年平均成長率は10.25%で群を抜いた。
中国の超高度成長に伴い、日本の最大貿易相手は、米国から中国へ移行した(図1)。
88年に日本から中国および香港への輸出は2.71兆円で、米国の23.63%、台湾の1.48倍であった。それが07年に米国を逆転し、21年には21.87兆円となり、米国の1.47倍、台湾の3.65倍となった。
一方、88年に中国および香港から日本への輸入は1.53兆円で、台湾の1.37倍、米国の28.48%であった。それが02年に米国を逆転し、21年には20.50兆円となって米国の2.30倍、台湾の5.57倍となった。
21年の日本の貿易総額に占める中国の構成比は22.9%で、米国の14.1%、台湾の5.8%を凌駕(りょうが)した。
日本から中国へ産業用ミシンなどを輸出し、低賃金の労働者を集めて生産した安価な衣料品などを日本へ輸入するタイプのビジネスモデルが日中貿易の主力であったのは、もはや昔の話である。
中国の民営ハイテク企業である華為技術(ファーウェイ)は、19年に日本企業から約1.1兆円の部品を調達した。同社は米国政府による制裁を受け半導体の調達が困難となり、調達額は20年に約8800億円へ減少した。しかし、日中両国のハイテク産業は相補的なサプライチェーンを深化拡大している。
21年に日本から中国への輸出で構成比率が10.8%で最大なのは、半導体、ダイオード、抵抗、コンデンサーなどからなる「集積回路(IC)」(約223億ドル。21年の年平均為替レート(1ドル=109.84円)で換算すると約2.5兆円)であり、第2位は「半導体、集積回路またはフラットパネルディスプレーの製造用機器」(約129億ドル=約1.4兆円、6.3%)で、第3位は「自動車」(約89億ドル=約9753億円、4.3%)である。
21年に中国から日本への輸入で構成比率が11.8%で最大なのはスマートフォンなどの「電話機およびその他の機器」(約218億ド…
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週刊エコノミスト
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