国際・政治 暴走する中国
米中の緊張は常態化するか 渡部恒雄氏にインタビュー
有料記事
台湾を巡り米中関係が緊迫している。両国の政治、外交、安全保障に詳しい笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄氏に聞いた。
(聞き手=浜條元保・編集部)
「米中両軍の対話チャンネルを閉ざすのは危険だ」
── 8月初旬のペロシ米下院議長(民主党)の訪台をきっかけに米中対立が一層強まった。
■ペロシ氏訪台による米中対立激化の責任は、バイデン米大統領と習近平中国国家主席の双方にある。無用な対立を避けたいのが米中両首脳の本音のはずだった。バイデン大統領は再三にわたり歴代政権の「一つの中国」政策に変更はないと中国側に示し、中国も7月末の米中首脳会談に合意した。しかし7月19日にペロシ氏の訪台の可能性を英紙『フィナンシャル・タイムズ』が報じてしまい、翌日バイデン氏は「米軍は(ペロシ氏の訪台を)いい考えとは思っていない」と発言するだけ。7月28日、米中首脳電話会談で、習氏はペロシ氏訪台について「火遊びすれば、やけどをするだけだ」と強くけん制せざるを得なくなった。ここで弱腰を見せれば、共産党内での批判は必至だからだ。この発言によって、ペロシ氏は台湾訪問を延期できなくなり、バイデン氏も訪台断念を説得するわけにはいかなくなった。中国に妥協すれば、両者とも民主党の人権派と共和党の対中強硬派の両方から批判されて立場を失ってしまう。
── ペロシ氏の訪台直後から中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。
■中国国内のネット空間では、ペロシ訪台前に「ペロシの飛行機を撃墜せよ」、訪台後は中国軍の演習を「あまりにも甘い対応だ」という過激な意見が投稿された。習氏は軍事演習をしない選択肢はなかった。中国政府は、自らがあおってきたナショナリズムにより、合理的な対応ができなくなってきている。
力のない国は相手にしない
── 今後の展開は?
■米中とも短期的には緊張を緩和させたいという気持ちは変わらない。習氏は来年の3期目続投を前に、経済…
残り791文字(全文1591文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める