来年の米国株は大幅安 相場支えた「自社株買い」に課税 大堀達也(編集部)
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従来、米株価を底上げしてきた2大要因の一つが消え、もう一つは弱体化する。
富裕層への風当たり強く、年末駆け込みが“最後の宴”
米国の株価と米連邦準備制度理事会(FRB)が保有する債券(米国債・政府機関債)の残高(前年比)には相関関係がある。今年に入ってナスダック総合指数は下落基調にある。一方でこの間、FRBも、市場の債券を買い上げてマネーを供給する量的緩和(QE)を終了して今年6月からは量的引き締め(QT)に転じ、保有債券残高を減らしてきた(図1)。
QEの下では供給されたマネーで株を買った機関投資家が相場を押し上げたが、QTではこれが逆回転。つまり、FRBは償還を迎えた債券の再投資をやめることで、市中に供給されるマネーが縮小する。結果、株式に向かう原資が減ることになる。この先、カネ詰まりから金利が上がると、借金で原資の何十倍もの投機を行うヘッジファンドが経営を圧迫され、損失を穴埋めするために株を投げ売りする可能性も浮上する。パウエルFRB議長が引き締め強化の意志を示したことで米株は当面、軟調が続く可能性が高い。
「100兆円の買い」が縮む衝撃
来年、米株にはもう一つの下落リスクが待ち受けている。今年8月16日、米議会で新しい歳出・歳入法が成立し、企業増税の一環として「自社株買い」への課税が来年1月から始まるからだ。
米企業による自社株買いは近年、米株相場を押し上げてきた大きな要因の一つだ(図2)。特にナスダック市場の主な構成銘柄であるIT企業を原動力として、2021年4月〜22年3月の米国の自社株買い額は8055億ドル、日本円換算(1ドル=140円)で約112兆円と過去最大規模に上った。この自社株買いにより米株はコロナやウクライナ紛争でも大暴落を免れてきた。
企業が自社の株を買った分は市場に流通しなくなり、市場に出回る株の数(発行済み株式数)が減る結果、1株当たりの利益(E…
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週刊エコノミスト
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