ウクライナ国債を持つ大手欧銀がヤバい 大堀達也(編集部)
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コロナ禍と地政学リスクによって債券市場に異変が起きている。
世界“債券”危機 「米債売り」が招く株暴落
世界の国々は今、保有する米国債を減らしている。
図1は米国を除く各国の外貨準備と、それぞれの中央銀行が持つ米国債の残高の推移である。米国債残高は昨年をピークに急速に減少している。
また、外貨準備も今年に入って急減している。外貨準備の7割程度が米国債といわれ、米債の減少が外貨準備に反映している可能性がある。
各国が米債を手放している背景には、コロナ禍で米国政府が米債を大量に発行したことで市場価値が下がったことが大きい。さらに各国固有の事情もある。景気減速の中国では資金繰りに窮する企業が増えている。例えば債務不履行に陥った不動産大手・恒大集団はドル建ての巨額負債を抱えており、政府が米債を売って恒大にドル資金を融通しているとみられる。日本の民間金融機関も米債を減らしている。
さらに本国米国では、インフレ抑制に必死の米連邦準備制度理事会(FRB)も量的引き締め(QT)で米債の購入を終了する。こうした米債の「買い手不在」は長期金利の急騰を引き起こす。これは株価に打撃を与え、さらに機関投資家の含み損を拡大させ、その補填(ほてん)のためにさらなる株売りを呼ぶ「負の連鎖」を招く。
欧州発「金融危機」
米債以上に買い手がいないのが、紛争国の債券である。例えば、ウクライナが発行する国債は、戦争の勃発によって価格が暴落、紙くず同然になっている。
いま最も危険なのは、こうした紛争国の債券や貸し出し債権、投資信託などを大量に保有する欧州の大手銀行である。債券暴落で大きな損失を抱えた大手欧銀は、ウクライナ…
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週刊エコノミスト
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