地域の「脱炭素」戦略 地産の再エネでEVをシェア 広町公則
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地方独自の成長戦略として、地元で開発した再エネでEV(電気自動車)を走らせる動きが広まっている。
環境省選定「脱炭素先行地域」第1弾は26市町村
環境省が「脱炭素先行地域」の選定を進めている。脱炭素先行地域とは、菅義偉政権が2020年10月に宣言した「50年の温室効果ガス排出量実質ゼロ」実現に向け、「地域の脱炭素」を推進する施策の一環で、意欲的に取り組む自治体が選ばれる。25年度までに少なくとも全国100カ所の脱炭素先行地域を選び、脱炭素のモデルにする狙いだ。選定された自治体は、補助金など国の支援を受けることができる。
第1回では共同提案を含め日本全国102の自治体から79件の計画が提出され、今年4月に26件が選定された(表)。
さまざまなEV車両を活用
農山漁村から大都市の市街地まで、地域特性の異なるさまざまな自治体で、内容も多種多様だが、地域で発電した再エネの導入拡大を地域の課題解決に結び付けたものが多い。その一環として、EVをはじめとする電動車についても、ほとんどの自治体が何らかの形で計画に盛り込んでいる。購入支援にとどまらず、より積極的かつ具体的に電動車に取り組もうとする計画が20件を超える。EVの種類も、バスやタクシー、トラックなど多岐にわたる。
例えば、佐渡市では、再エネを生かしたEVによる地域交通サービスの構築を目指す。佐渡市全域の防災・観光・教育施設(125施設)に太陽光発電や蓄電池を設置、併せて耕作放棄地などに太陽光発電、木質バイオマス発電設備を置き、主要防災拠点(10地区)に大型蓄電池を導入する。公用車25台をEVに置き換えるとともに、道の駅「あいぽーと佐渡」に再エネ100%によるEV充電施設を整備し、レンタカー事業者や宿泊施設を対象にEVや充放電設備の導入を支援する。
佐渡市の渡辺竜五市長は、「脱炭素先行地域の事業化は、本土と電力の系統連系がされていない離島特有の災害への脆弱(ぜいじゃく)性といった課題解決のみならず、エネルギー消費に伴う経済的収支の改善やゼロカーボンブランディングによる地域循環共生圏の創出につながる」と説明する。「トキと共に暮らす環境の島」などを標榜(ひょうぼう)し、地域イメージの向上にもつなげたい考えだ。
さいたま市の「公民学によるグリーン共創モデル」では、全公共施設、市内2大学、各種商業施設などに太陽光発電設備を設置するとともに、卒FIT電源(固定価格買い取り制度における買い取り期間を終えた再エネ電源)や新設のごみ発電など多様な再エネ電源を活用。さらに、事業者と連携したエネルギーマネジメントシステム(EMS)により電力需給管理のスマート化を図り、再エネ電力の幅広い利用を目指す。
同市では、既にモビリティーの電動化をさまざまなかたちで進めているが、同計画においては再エネを利用した「シェア型マルチモビリティーサービス」を…
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週刊エコノミスト
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