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英トラス新政権の大規模減税と国債増発で金融市場は「トリプル安」 市川雅浩

 英国の通貨ポンドが急落し、対主要通貨でほぼ全面安の展開となっている。9月26日には、対ドルで1ポンド=1.0350ドル水準まで下落し、1972年の変動相場制移行後の最安値を付けた(図)。こうしたなか、債券市場では英国債の利回りが急騰(価格は急落)しており、27日には10年国債利回りが一時4.53%台まで上昇したほか、30年国債利回りも一時5%台に乗せ、2002年以来の高い水準に達した。

 また、FTSE100種総合株価指数も急速に下げ足を速めている。このように、英国金融市場では、通貨安、債券安、株安の「トリプル安」が進んでいる。きっかけは、トラス新政権が9月23日に打ち出した大規模な減税策と国債の増発計画だ。これにより、英国の財政悪化懸念が、市場参加者の間で急速に強まった。

資本や労働力に課題

 政府の目的は、高額所得者の減税、規制緩和を通じた成長促進、光熱費凍結によるインフレ抑制などであり、年2.5%の成長を目指し、成長による税収増で財政再建を実現するとしている。なお、今回の減税規模は、政策効果がすべて出る26年度には450億ポンド(約7兆4000億円)となる見通しで、72年以来の大型減税となる。

 一方、これらの政策を実行するにあたり、23年度の国債発行額は1940億ポンド(約31兆8000億円)と4月時点の予想の1310億ポンドから大幅に拡大するとみられる。改めてその内容をみると、いくつか問題点も浮かび上がる。エネルギー対策は、今後、ガス価格が高騰すれば、政府の負担が増えることになり、規制緩和については、欧州連合(EU)を離脱している現状、短期間で十分な資本や労働力の供給を得ることは、難しいように思われる。

 資本や労働力の供給が不十分なまま、大規模な減税を実施しても、成長による税収増は期待できず、財政赤字が拡大する公算が大きいと見られる。財政赤字拡大が経常赤字の拡大につなが…

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週刊エコノミスト

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