今の米国株は成長&高収益銘柄の仕込み時か 平川昇二
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人口の多い1990年生まれの消費の伸びが株価押し上げ要因に
足元の米国株式市場は高止まりするインフレに対処するための急速な利上げを嫌気する形で、バリュエーション(投資尺度)の低下を主因とする調整局面が続いている。
昨年までは、コロナショック対応で、積極的な財政政策や米連邦準備制度理事会(FRB)による量的金融緩和(QE)が行われてきた。そのため、景気抑制的な水準への政策金利(FF金利)引き上げに相当な時間を要したが、長期金利はそろそろ今回の金融引き締めの全貌を織り込む水準に向きつつあり、年度末に向けて一旦、株価の反転局面が起こりそうだ。
業績悪化予想ではない
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたFF金利予想中央値は2022年末で4.4%、23年末で4.6%であった。また、FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コアの予想値は22年末に4.5%、23年末で3.1%であった。データ発表以降のFRB理事や地区連銀総裁の発言などから23年末に実質FF金利を1.5%程度(FF金利を4.5〜4.75%)に引き上げたい意向がうかがえる。
従って、PCEコアが8月の前年同月比4.9%増から加速することなく緩やかに低下し、上記予想の22年年末値4.5%の達成が可能であるようならば、23年にはPCEコア3.1%も可能だという前提の下、FF金利は想定通り4.6%まで引き上げられるだろう。そうした場合、利上げ局面が一旦終了すると考えられる。
過去、2年債利回りはFF金利ピークに先行か一致する形で、FF金利以上の水準でピークをつけてきた。現時点で、2年債は年初来ですでに約4.49%まで上昇しており、FF金利のピークが4.5%ならば上昇余地はわずかで、4.75%ならばあと0.26%残されていると計算できる。
一方、10年債利回りはFF金利のさらなる引き上げで、景気減速を織り込むので2年債に比べ最大で0.50%強低い水準になると予想され、ピークは4〜4.25%程度となると見込まれ、こちらも上昇余地は大きくはない。
米主要大型株で構成されるS&P500は年初から下落した。だが、大半は業績予想の悪化によるものではなく、長期金利上昇により予想PER(株価収益率)が低下したことによるものであった。そのため、想定される長期金利ピークアウトと、その後の低下は株価指数反転要因と考えられる。
インフレ再加速リ…
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週刊エコノミスト
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