経済・企業 インフレ時代の投資術
投資家ジム・ロジャーズ氏「円安で成功する産業は四つある」
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シンガポールに住む米国人の著名投資家、ジム・ロジャーズ氏がインフレと円安の行方を語った。>>特集「インフレ時代の投資術」はこちら
1ドル=175円前後になる可能性は十分
ロシアとウクライナは小麦やトウモロコシなどの穀物を大量に産出するため、戦争はその価格を大きく引き上げた。特に戦場となったウクライナでは穀物の輸出が一時途絶し、今後も耕作が困難となって収量が大きく減るおそれがある。そのような背景から世界中で穀物価格が急騰し、人々の生活を苦しめている。
また、戦争によって輸送コストや石油、天然ガス、銅などが跳ね上がった。戦争が長引くほど値上がりが続くだろう。ロシアの石油や天然ガスに依存するヨーロッパでは、ガソリン、電気料金、暖房費が大幅に高くなった。
日本では、ウクライナ情勢を受けて農作物やエネルギー資源の価格が急騰して貿易収支の赤字が膨らんだことで円が売られ、その結果として輸入価格の円換算値が更に上がってインフレが加速している。インフレが円安を招き、それが更なるインフレを招くという負のスパイラルになっているのだ。
円は対米ドルで、最も大きく価値を下げた通貨の一つだ。その根本的な理由は日本の高齢化、人口減少、赤字が続く貿易収支といったものだ。日本は農産物や代替エネルギーの国内生産を今まで以上に強化することを考える必要がある。過度に海外依存することは日本にとってマイナスだ。
私はもっと早く円安が進むと予想していた。日銀はずっと前から資金を大量供給してきた。大量の紙幣を印刷すれば、その通貨の価値は下がる。最近になって、市場参加者は日本を巡る現実を冷静に見るようになり、円を売っているように見える。
「円安はどの水準まで続くと思うか」とよく聞かれる。私は円が1ドル=175円前後だった1986年ごろの水準に戻る可能性が十分あると考えている。当時とは違い、日本の貿易収支は巨額の赤字になっており、経常収支も以前より悪化しているからだ。
成功する四つの産業
ただ、今の急な円安によって、外国人投資家はドル換算すると安くなった日本株を買える。歴史を振り返ると、通貨が安くなっている国の株式は上昇しやすい。日本企業も輸出が多い製造業など一部は恩恵を受けるだろう。個人にとっては、円安が続いて資産が目減りするのを傍観するより、実物資産を購入して資産を保全したいという意欲が強まるに違いない。現預金から貴…
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週刊エコノミスト
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