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経済・企業 インフレ時代の投資術 

《歴史に学ぶ》浮足立たず、人材と研究へ投資を 北村行伸

スーパーでトイレットペーパーに殺到する人々(1973年10月、東京都北区)
スーパーでトイレットペーパーに殺到する人々(1973年10月、東京都北区)

 石油危機時など統計的に極端な過去のインフレを意識し過ぎて、今の水準に浮足立ってはならない。>>特集「インフレ時代の投資術」はこちら

来春には一巡する可能性大

 戦後日本のインフレ率を見ると、年率30%を超す水準が続いたのは敗戦後の混乱期にあった1946〜48年だけだ。46年は1079.3%、47年は150.4%、48年は75.0%ものすさまじいインフレだった。当時は食料品などモノが極度に不足し、金融機能は壊滅的になった。

 その後、再び非常に高いインフレに見舞われたのは73年の第1次石油危機がきっかけだった。日本では戦後の混乱期を若くして経験した人々が40〜50代になり、社会の中心を担っていた。食料不足、物不足の大変な苦労を知っているがゆえに、トイレットペーパーなどの買い占めが起きたと考えられる。そのような消費者心理が74年に「狂乱物価」と呼ばれた20%を超すインフレを招く一因だったと考えている。

インフレを促すリスク

 二つのインフレを比べると、前者は日本が戦争に敗れ、戦勝国に占領される中で起きた。歴史的に見れば、第一次世界大戦後のドイツや2000年代後半のジンバブエのように年率1万%を超すようなハイパーインフレーションの例がある。いずれも国家財政が破綻する異常事態で起きた。

 石油危機の後に起きたインフレは違う。国外で起きた出来事の間接的な影響を受けて物価が大きく上がったのであり、日本が自ら重大な危機を引き起こしたわけではない。

 今のインフレ(消費者物価指数、生鮮食品を除く)は9月に前年同月比3%増に達したばかりで、ハイパーインフレーションには程遠い。日本は戦争当事国ではなく、ウクライナとロシアが戦い、米国と中国の対立を背景に石油、天然ガス、小麦などの食料品、その他の天然資源の価格が上がるコストプッシュ型だ。「外から来たインフレ」であり、日本が問題を起こしているのではない。

 しかも石油危機から50年近くたち、経験した人は現役世代には少ない。仮に今後、インフレ率が更に高まっても、今の人々が過去の経験に基づいて買いだめに走るといった極端な行動に出るとは考えにくい。

 インフレの先行きはどうか。今年3月ごろから資源価格が顕著に上がり始めたことを考えると、1年たった来年4月か5月ごろには一巡するだろう。新たに危機的な状況が起きれば別だが、そうでなければ収まってくると考えている。

 一…

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