「政治の季節」続く中国の習近平1強体制の行方 斎藤尚登
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10月に開催された共産党大会で、総書記として異例の3期目入りを果たした習近平氏。肥大化する習氏の権力は、中国をどこに向かわせるのか。
3期目方針に掲げた「経済最優先」を貫徹できるか
5年に1度の最重要会議である中国共産党第20回党大会が今年10月16〜22日に開催された。習近平(シー・ジンピン)総書記による「報告」や、党大会翌日に発表された党人事における「習近平1強体制」の確立に対しては、ネガティブな評価が多い。一方で、ポジティブな評価ができるのは、「報告」における今後5年の目標・任務について述べたくだりである。具体的には、①経済の質の高い発展、②改革・開放、③法治などの8項目だ。
経済の質の高い発展では、経済建設が最優先されることが示された。ちなみに、今後5年の目標・任務に「共同富裕」(皆が豊かに)政策への言及はない。分配に重点を置く共同富裕は、早急に結果を求めれば経済成長の阻害要因になりかねず、より長期的な政策として位置付けられている可能性が高い。当面は、経済最優先であること、その原動力が「改革・開放」であることが示された格好だ。
突如の経済指標発表延期
党人事については、序列2位に抜てきされ、李克強(リー・クォーチャン)首相の後任と目される李強(リー・チャン)氏に焦点を当てたい。李氏は習氏の浙江省時代からの腹心の部下であり、先日まで上海市のトップだった。
上海市は今春の都市封鎖の直前まで「ゼロコロナ」政策と経済・社会活動の両立を志向していた。「感染者発見後2時間以内の疫学的調査隊の現地入り、4時間以内の基本的な疫学調査実施、24時間以内の濃厚接触者の割り出しとPCR検査・隔離」という「2+4+24」システムの下で、感染者の早期発見と感染経路の遮断を行い、行動制限を最小限にしようと試みた。
しかし、オミクロン株とその派生型は無症状の感染者が多いことが特徴で、このシステムでは取りこぼしも多かった。結局、上海市では感染者が急増し、厳格な都市封鎖が1カ月半にわたり継続されたのである。上海市の感染者急増は、李氏の先進的な取り組みがかえってあだとなった感がある。
李氏の国内での評価はどうか。上海市では当初、同市を東と西に分けて、それぞれ5日間の行動制限を想定していた。ところが都市封鎖の長期化で、事前準備がままならなかった市民の間で餓死者の存在が指摘されるほどの混乱が生じた。批判が高まる中で、それを抑え込んでまで習氏が李氏を登用したことになる。李氏は習氏に絶対服従であり、習氏の決定・政策を忠実に実行していくことになろう。
今後は「習近平1強体制」の弊害が大いに懸念される。1強体制では、習氏が一度始めた政策がたとえ誤りであったとしても途中で軌道修正が難しくなる。「ゼロコロナ」政策への固執は最たるものだろう。さらに、そんたく・忠誠合戦は、政策の立案・遂行が習氏の意図を超え…
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週刊エコノミスト
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