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統一地方選惨敗の台湾・民進党 総統選は依然優位 福岡静哉
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台湾の統一地方選が11月26日投開票され、与党・民進党が惨敗した。蔡英文総統は民進党の主席(党首)を辞任した。総統職にはとどまるが、求心力の低下は避けられない。政治の焦点は、2024年1月が見込まれる次期総統選に移る。対中融和路線の最大野党・国民党は大勝で総統選に向けて弾みをつけた。台湾統一に強い意欲を示す中国の習近平政権は、台湾への介入をいっそう強めそうだ。
統一地方選では21の県市長選が焦点だった。民進党はわずか5勝にとどまり、国民党は13勝と勝利した(残りは第三勢力の台湾民衆党1、無所属2)。特に重要な直轄6市でも民進党は台南、高雄の2勝のみ。国民党は4勝した。台北では初代総統・蒋介石のひ孫、蒋万安氏(43)=国民党=が初当選し、同党が8年ぶりに台北市長ポストを奪還した。蒋氏は同党の将来の総統候補と目されている。
市民の不満の表れ
統一地方選は14年以降、3回連続で与党が大敗を喫した形だ。今回、当選者を事前予測し、20県市長選で的中させた東京外国語大の小笠原欣幸教授は「台湾社会は一つの勢力が強大な権力を振るうことを警戒する気風があり、与党をけん制する投票行動を取ることがある」と指摘する。選挙では蔡政権の新型コロナウイルス対策や経済運営などで募った市民の不満が投票行動に表れたといえそうだ。
年が明けると総統選に向けた与野党の公認候補選びが本格化する。統一地方選の結果は、その行方に影響する。連続2期目の蔡氏は出馬できず、民進党の「本命」は頼清徳副総統(63)だ。立法委員(国会議員)、台南市長、行政院長(首相)を歴任し、人気も高い。
頼氏は20年総統選の公認を決める19年の党内予備選で蔡氏に挑んだ。敗れた後、副総統に就任して蔡氏を支えてきたが、「感情的なしこりが残り、現在も蔡…
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週刊エコノミスト
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