国際・政治

習氏3期目に起きた異例のデモ 抵抗より面従腹背の中国社会=川島真

 2022年10月の第20回党大会後、中国ではゼロコロナ政策に反発する抗議運動が目に見える形で発生し、また11月30日には江沢民氏の訃報が流れるなど、依然として習近平政権第3期の運営が安定していないとの印象を受ける。このような事態は何を示すのか。

 結論を単純に述べれば、社会の側の切実な要請が習近平氏に突きつけられているということだ。かつ、習氏がそのことを把握しているかが問われ、今後の政権運営について、プライオリティーを社会からの要請に置けるか、という試練に直面していることにもなる。

 党大会で習氏は、「国家の安全」ネットワークを社会に巡らせ、管理統制を強化するとし、人々に「団結」を求めた。そうしてこそ、2049年の中華民族の偉大なる復興の夢、社会主義現代化強国を実現できるということなのだろう。だが、そうした長期的目標に向けて社会の多様性を削(そ)ぎ落とし、皆が同じ思想を持ち、同じように政策を進めていくことを習氏が目指すのなら、社会の切実な要請を見落とすことにもなる。

 その社会の要請とは、ゼロコロナ政策の緩和、景気対策、失業問題の解決などだ。だが党大会では、青年を共産党の理論で武装化するといった、イデオロギー強化の面では具体的政策が述べられたものの、社会の側の切実な要請に関わる部分は原則的な内容が多く、具体的な目標は設定されなかった。人事を見ても、市場経済を重視する改革派は一掃され、経済や財政、金融を担う人材が十分とも思われない。それだけに人々の失望は大きかった。

 そして、社会の側はゼロコロナ政策も党大会が過ぎれば多少は緩和するだろうと思っていたようだ。しかし結果的には、緩和どころか、感染拡大もあり、管理統制は一層強まった。この点では23年3月の全国人民代表大会(全人代、日本の国…

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週刊エコノミスト

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