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国際・政治 世界経済総予測2023 

北朝鮮はなぜこれほど多様なミサイルを撃ち続けるのか 宮本悟

新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲-17」型の試射。朝鮮中央通信・朝鮮通信が2022年3月24日付で配信
新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲-17」型の試射。朝鮮中央通信・朝鮮通信が2022年3月24日付で配信

 北朝鮮は5カ年の計画経済の中でミサイル開発を位置付け、計画的に兵器開発に力を入れている。

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 北朝鮮は2022年、数多くの弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射し、6月には年間発射数26発と最多を更新した。発射数は11月末までに80発以上となり、最多値の更新は北朝鮮の年度末である12月に近づいても続いている。北朝鮮のミサイル開発と生産体制は年々、質と量を高めてきたので、このような事態は想定されていたことである。

 北朝鮮では、新型コロナウイルス対策として20年初から国境を封鎖し、ほとんど貿易をしなくなったので、新型のミサイルはほぼ国内の資源と技術で開発・生産されていると考えられる。朝鮮半島北部の豊富な鉱物資源を最大限に利用していることは間違いない。

 北朝鮮がミサイルを発射する理由は、①新型ミサイルの実験(検収試験を含む)、②軍事演習──に大きく分かれる。軍事演習は主管が軍隊のため北朝鮮で報道されないことが多いが、新型ミサイルの実験は国防科学院の開発チームの功績をたたえるために報道されることが多々ある。また、22年10月10日のように、軍事演習を過去にさかのぼって報道することもあった。軍事演習の報道は米韓が合同軍事演習をしている時期が多く、米韓に対する抑止のためと考えられる。

 北朝鮮でどのような新型ミサイルを開発しているのかは、21年1月5~12日に開催された朝鮮労働党第8回党大会で策定された「国家経済発展5カ年計画」の「国防科学発展および武器体系開発5カ年計画」で一部が明らかになっている。米全土に到達する「1万5000キロ射程圏内を正確に打撃できる」ミサイルや、「極超音速滑空ミサイル弾頭」「水中・地上発射型の固体燃料による大陸間弾道ミサイル」「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)」などである。

 巡航ミサイルについては明確な目標が記されていないが、他にもミサイル開発計画があることは実際の発射実験で分かる。ただ、北朝鮮の計画経済に兵器開発が含まれることが公表されたのは、史上初めてであって、それだけ兵器開発には力を入れていることが分かる。それは、彼らが「帝国主義」と呼ぶ米国を中心とした西側諸国との戦争に備えるためである。日本も西側諸国に含まれる。

『火星』と『北極星』

 北朝鮮が22年に発射したミサイルは、弾道ミサイルと巡航ミサイルに分けられるが、多くが弾道ミサイルである。巡航ミサイルは型も型番も報道されていない。10月12日に発射実験したものは長距離戦略巡航ミサイルとされ、巡航ミサイルは中長距離、長距離、長距離戦略というように、射程距離を頭文字に付けて区別している。

 弾道ミサイルも、射程距離によって、短距離(戦術)、中長距離、大陸間に分けられる。射程距離の分類は、北朝鮮独自のものであって、具体的な基準は分かっていない。ただ、中長距離、大…

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