マーケット・金融

米国株が調整を終え、戻り基調にあると考えられる理由 市川雅浩

景気の局面によって物色業種を変える投資戦略も Bloomberg
景気の局面によって物色業種を変える投資戦略も Bloomberg

 S&P500株価指数は2018年以降、株価収益率(PER)が16倍を割り込むと上昇に転じる傾向がある。22年10月にもその傾向が確認された。

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 2023年の米国株を展望するうえで、はじめに米国経済の見通しを整理したい。

 米国の実質GDP成長率は、22年が前年比プラス1.9%、23年が同プラス0.8%と予想している。23年の成長ペースの鈍化は利上げの影響によるもので、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利(FF金利)は23年いっぱいは4.75~5.00%で据え置かれるとみている。消費者物価指数の伸び率は、22年の前年比8.1%から23年は同4.4%に低下するものの、2%台に戻るのは24年と考えている。

 そのうえで、米国株の現状と今後の方向性について考える。改めて、米国経済の立ち位置を景気循環で確認すると、図1の通り景気の減速初期では一般に、GDPの減少、物価の高止まり、逆イールド(長短金利の逆転)などが観測されやすい。米国では22年3月に利上げが始まった後、逆イールドが発生し、物価の高い伸びも続いている。米国経済は現在、景気の減速初期にあると推測され、23年は次の減速後期に進む可能性が高い。

 このような状況下で株式投資を考える場合、景気の局面によって物色する業種を機動的に変えていく「セクターローテーション」という投資戦略が注目される。図1では、景気の局面ごとに一般的に物色されやすい業種もまとめているが、減速初期から減速後期にかけてはエネルギーや生活必需品、ヘルスケアや公益事業が物色されやすい傾向がみられる。

ディフェンシブ銘柄優位

 そこで、実際に米国の代表的な銘柄で構成するS&P500株価指数の11業種について、22年3月の米利上げ開始前となる2月28日を基準とし、11月30日までの騰落率を確認する。11業種を上昇率の大きい順に並べると、エネルギー(プラス29.8%)、ヘルスケア(プラス7.0%)、公益事業(プラス5.2%)、生活必需品(プラス3.0%)、資本財(プラス1.8%)──となった。

 一方、マイナスとなった業種も多く、素材(マイナス0.6%)、金融(マイナス5.8%)、情報技術(マイナス12.2%)、不動産(マイナス12.8%)、一般消費財(マイナス18.8%)、通信サービス(マイナス25.8%)という結果になった。上昇率が高い業種には、景気に左右されにくい「ディフェンシブ」な業種が位置し、米国景気が現在、すでに減速初期にあるという市場の見方を反映したものと思われる。

 再び図1に目を向けると、アルファベット(グー…

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