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2023年に明白となるマスク氏の野望 ツイッター買収は通過点 土方細秩子
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2022年11月、米テスラの累計販売台数が300万台を超えた。22年通年の販売台数が100万台を超えるのは確実で、12月には大型トラックも納入され、自動車メーカーとしては盤石の体制を築きつつある。
にもかかわらずテスラ株が年初から半分に暴落したのは、ツイッターを巡る同社CEOイーロン・マスク氏の言動や自社株売りなどに左右されたこと、コロナによる物流の乱れで市場の予測には販売台数が届いていなかったこと、さらに他のメーカーが新しい電気自動車(EV)を次々に導入し相対的なテスラ車のシェアが下がることなど、さまざまな要因があった。
それでもテスラ社の時価総額は12月23日現在で3858億ドル(約51兆円)で、トヨタ自動車の時価総額(29.6兆円)よりかなり多い。両社の利益率を比べるとトヨタがおよそ9.5%に対しテスラは17%だ。ディーラー網を持たず、広告宣伝も一切行わないテスラは、既存の自動車メーカーと比較すると研究開発に使える金額が大きいという利点がある(図2)。
衛星・ロボット・発電所
ツイッター騒動に隠れてそれほど騒がれなかったが、22年もテスラは次々に新しいビジネスに着手している。まず2月には同社のウェブサイトで販売されているグッズに初めて仮想通貨(暗号資産)ドージコインでの支払いが可能となった。ゆくゆくは車の支払いそのものにも仮想通貨を導入したい、というのがマスク氏の考えだ。
次に、関連会社スペースXが展開する衛星通信スターリンクによる通信がテスラ車に導入された。そしてPCゲームのプラットフォームであるスチームが車内エンターテインメントとして利用できるようになった。23年にはテスラスマホが発売される可能性が以前から指摘されている。
9月には人型ロボット「テスラボット」が、工場内などで業務アシストをする計画を発表。12月にはテキサス州で仮想発電所(バーチャル・パワー・プラント=VPP)を開設することも明らかにされた。
VPPとは、自宅にソーラーパネルとテスラ社のパワーウオールを持つ人が対象で、自宅に蓄電した電力をピーク時などに送電線に還元し、電力危機をコミュニティー全体で防ぐ、という壮大なシステムだ。
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つまりテスラは関連会社も含めて、自動車製造販売を中核に「エネルギー」「インフラ」「通信」「AI(人工知能)・ロボティクス」「サービス・エンターテインメント…
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週刊エコノミスト
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