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経済・企業 インド新興国経済

基礎から分かるインド経済Q&A 松井聡

 2023年にも人口世界一となるインド。高い経済成長で注目されるこの国を基礎から解説する。

>>特集「インド新興国経済」はこちら

 Q 歴史は?

 A 西北のインダス川流域で紀元前2000年ごろを中心に、世界四大文明の一つ、インダス文明が栄えた。同時期に中央アジアからアーリア人が侵入し、先住のドラビダ系の人々と交じり合う過程で、バラモン教が生まれ、ヒンズー教に発展したとされる。1526年にはイスラム王朝のムガル帝国が建国され、支配地域をほぼインド全土に広げた。

 17世紀以降は欧州諸国が交易を目的にインドに入植し、19世紀中ごろには英国による植民地支配が確立。1947年に英国から独立する際、ヒンズー教徒が多数を占めるインドと、イスラム教徒が多数のパキスタンに分離する形となった。その際、両教徒が衝突し、100万人以上が死亡したとされ、両国の対立の背景になっている。

 Q 国土や人口は?

 A 国土は日本の約9倍に当たる328万7469平方キロメートル(パキスタン、中国との係争地を含む)。人口は2022年7月時点の国連の推計で約14億1200万人で、約14億2600万人の中国に次ぐ。23年には中国を抜いて世界最多となる見通しだ。15~64歳の「生産年齢人口」も20年時点で9.2億人超(人口の約67%)に上り、中国(約10億人)に次いで多い。

 政治体制は共和制。実権は国家元首である大統領ではなく首相にあり、5年に1度の下院選挙で政権が決まる。現在はインド人民党(BJP)を中心とする連立政権で、14年に就任したモディ首相が2期目を務めている。隣国のパキスタンやバングラデシュでは軍部によるクーデターが起きてきたが、インドでは一度も起きておらず、民主的な体制を維持している。

 Q 宗教やカースト制度は?

 A 8割がヒンズー教徒で、イスラム教徒が約14%を占める。少数だが、キリスト教、シーク教、仏教、ジャイナ教の信者もいる。与党のBJPは、ヒンズー至上主義団体を支持母体としており、モディ政権は「イスラム差別」と指摘される政策を相次いで進めてきた。米国や欧州の各国からはインドの人権状況を懸念する声が上がる。またインド伝統の身分制度カースト制度も根強く残っており、貧富の格差が大きく、貧困層も多い。

 Q 地域による特徴は?

 A 「多様性の国」といわれるほど、民族、言語、習慣、料理などさまざまな面で地域差が大きい。公用語のヒンディー語を母語とするのは6億人に過ぎないとされ、方言も含めて600の言語があるという。このためインド人同士であっても、出身地域によっては意思疎通できないことも珍しくない。紙幣…

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