巨額補助金「PLI」でメーク・イン・インディア推進 対木さおり
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インド政府は三つの補助金で製造業振興策「メーク・イン・インディア」を強力に推し進めている。
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14億人の巨大市場を持つインドは、積年の念願である国内製造業振興に向けた政策を本格化させている。インド政府は、2025年までに電子機器の設計製造分野のバリューチェーン全体の発展を実現するため、「生産連動型優遇策(PLI)」「電子部品・半導体製造促進政策(SPECS)」「電子機器製造クラスター計画(EMC2.0)」の三つのインセンティブ・スキームを通じて、製造業の振興を柱とする「メーク・イン・インディア」を推進している。とりわけ、20年に導入されたPLIが海外企業の誘致と国内生産増強を強力に後押ししている。
このスキームは電子機器製造分野や医療機器などの分野で先行的に開始し、同年11月には自動車・自動車部品やセル電池などを追加、現在は14分野となっている。
5年間の補助金
PLIスキームは、インドで製造された対象セグメント製品の売上高の増加分に対して4〜6%の割合が、20年から5年間補助金として支払われる構造だ。実際の担当は業種ごとの所管省庁となり、それぞれ予算が割り当てられる仕組みとなっている。インセンティブの適用には年度ごとに追加投資額および売上増加額のそれぞれに基準があり、毎年各基準を満たす必要があることから、承認を受けた企業側の生産拡大へ向けた前向きな取り組みが期待できる。
PLIの対象分野は幅広い(表)。海外企業の生産活動も活発化しており、自動車分野のPLIでは、スズキ、フォード、現代、マヒンドラ&マヒンドラ、タタ・モーターズなど20社を選定し、この中には、日系企業が10社以上含まれる。また日系企業の承認が多い分野として特殊鋼や白物家電などがあり、例えば白物家電分野では、ダイキン工業、日立製作所、日本電産、パナソニックなどが対象企業に選ばれた。
この政策が順調に海外企業からの投資を引き付けている背景としては、米中対立の長期化や、新型コロナウイルスによるロックダウンなど、地政学リスクの高まりによる海外企業の生産拠点分散化の動きも関係している。アップルは生産施設の設置先の多様化を目的に、25年までにiPhone(アイフォーン)の一定割合をインドで生産することを検討しているともいわれている。インドでは今後生産年齢人口が増加し、労賃も低いこ…
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週刊エコノミスト
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