インドを追う国々《フィリピン》若い“人口1億人”で高成長 小宮佳菜
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フィリピン経済は幾分減速基調となる一方、人口増や投資拡大で底堅さを示すことが期待される。
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フィリピンは、約1億人の豊富な人口と若い人口構成(2020年時点の年齢の中央値は25歳)を背景に内需主導の高成長を実現している。国内総生産(GDP)の7割を構成する民間消費が堅調に推移するなか、アキノ政権(10~16年)やドゥテルテ政権(16~22年)下では、財政健全化やインフラ投資の加速などにより、投資率が上昇し、成長率の押し上げにつながった。
産業別では、卸売・小売業、金融・保険業など、サービス業の拡大が経済をけん引している。また、公用語に英語もあるフィリピンでは、政府が企業戦略や業務プロセス分析などを通してビジネスの最適化を目指す「ビジネスプロセスマネジメント」や情報技術(IT)産業を有望産業の一つとして誘致・育成を強化してきており、同産業の売上高はGDP比7%と、海外労働者送金(同1割)に並ぶ規模まで成長している。
6%程度のプラス成長
フィリピンでは、20年の実質GDP成長率は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞や自然災害の影響で、前年比マイナス9.6%と統計上最大の落ち込みとなった。しかし21年半ば以降は、民間消費の拡大を支えに回復に転じ、21年通年の成長率は同プラス5.7%とプラス成長に復帰。その後も景気拡大が続いており、22年7~9月期の成長率は、同プラス7.6%と好調を維持した。
景気の鍵を握る実質民間消費は、消費者マインドの改善や政府の経済支援策などを受けた実質賃金の上昇に加えて、海外労働者からの送金額の増加などがサポート材料となった。
フィリピン経済は、インフレの高進を受けたフィリピン中央銀行の利上げが内需の抑制要因になってくるとみられるほか、欧米を中心とする世界経済減速の影響も想定される。一方、経済活動の正常化に伴い民間消費の増加やツーリズムの回復傾向が続くとみられることに加え、人口増や投資拡大を背景に6%程度のプラス成長は続く見込みである。総じて底堅さが期待される。
経済成長の質をさらに高めていくには、国内産業…
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週刊エコノミスト
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