インドを追う国々《インドネシア》巨大人口をデジタル経済で動かす 舛友雄大
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インドネシアは2億7000万人の人口と豊富なニッケル資源で、電気自動車(EV)でも主導権を狙う。
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インドネシアのジョコ大統領は同国が独立100周年を迎える2045年までに国内総生産(GDP)を7兆ドルに増やし、世界第5位以内の経済大国になるという野心的な目標を掲げる。米ゴールドマン・サックスは、22年12月のリポートで、現在は経済規模で世界トップ15位圏外にあるインドネシアが、50年には中国、米国、インドに次ぐ第4位に急上昇し、その後も75年にかけてそのまま第4位を維持するとの長期予測を発表した(表)。OECD(経済協力開発機構)も、購買力平価ベースのGDPで早くも32年に日本とインドネシアが逆転すると予想する。
経済大国化が見込まれる主な論拠は、その人口面での優位性だ。2億7000万人超で世界第4位の人口を誇るインドネシアは、1980年代以降に生まれた世代が人口の半分以上を占めるなど、若年層が厚いのが特徴で、すでに高齢化が始まったタイをはじめとする隣国と違い、人口ボーナスのピークが30年に到来するとみられ、総人口も3億人を超えていくとみられる。
マクロ経済の環境も比較的安定している。22年、インドネシアの外国直接投資(FDI)は過去最高水準で推移し、海外からの強い投資意欲が続いている。同時に、最近のコモディティー(商品)価格高騰は、資源国インドネシアにとってはむしろ追い風となっており、過去最大規模の貿易黒字を記録している。
アジア通貨危機後、過去20年ほど平均5%前後の成長を安定して遂げてきたインドネシア経済は新型コロナウイルスからの回復も早く、国内消費はコロナ前の水準を超えた。現地通貨ルピアは落ち着いた値動きを見せている一方、足元ではインフレが加速しつつある事態を受け、中銀は22年の後半に5カ月連続で利上げを決めた。
電子商取引がけん引
躍動するインドネシア経済の支柱の一つがデジタル経済だ。コロナ禍に伴うロックダウンの影響で、特に電子商取引(EC)がけん引した。そのほかにも、デジタルネーティブが多いという好条件のもと、フィンテック、オンライン旅行、エデュテックやカフェを中心とする飲食系スタートアップが勃興した。CB Insightsの統計によると、インドネシアにはこれらの業界を中心に7社のユニコーン企業(企業評価額が10億ドル以上の未上場企業)がある。
米グーグル、シンガポール政府系投資会社テマセク、米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーが22年10月に発表したリポートで、19年から22年にかけて同国のデジタル経済の規模が410億ドルから770億ドルへと拡大し、今後25年にかけてさらに倍近くの1300億ドルに達すると見通した。
ただ、足元では世界的な「テックの冬」とシンクロする形で、多くのスタートアップが調整…
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週刊エコノミスト
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