新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 アートな時間

物語がどこへ向かうのか分からないまま目が離せない怪作 勝田友巳

©2022 20th Century Studios. All Right Reserved.
©2022 20th Century Studios. All Right Reserved.

映画 イニシェリン島の精霊

 ヘンな人が登場して常識外れのことが次々と起きるからコメディーには違いないのに、あまりにグロテスクで笑っていいのか分からない。「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督が、アイルランドの架空の島を舞台に恐るべき人間模様を描き出した怪作。

 1923年、アイルランドのイニシェリン島。対岸の本土では内戦が進行中で、島にも気配が伝わっている。ロバをかわいがる素朴なパードリックと芸術家肌のコルムはパブでおしゃべりをするのが日課だった。パードリックはコルムを年かさの親友と思っていたのに、ある日突然絶交を言い渡される。

 物語は単純だ。親友2人の仲たがい。しかしその展開は、見ている方の予測や期待を裏切り続ける。コルムの言い分は一方的で、取りつく島がない。ナタで断ち切るように、パードリックとの交際をやめ、話しかけるなと言い渡す。パードリックは知性豊かというタイプではなくても、お人よしでいいヤツのようだ。よほどの事情があったのだろう、それがこれから解き明かされるのだ、と普通は思う。

 しかしコルムの言い分は、作曲と思索に残りの人生を使いたい、パードリックとの会話は無駄だからもうやめる、なのだ。パードリックでなくても途方に暮れる。仲直りを試みるパードリックに、コルムは、付きまとったら自分の指を切り落とすと通告する。パードリックではなく、自分の指ってどういうことだ? 見てい…

残り705文字(全文1305文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月10日・17日合併号

2025年に上がる株16 トランプ旋風は日本にチャンス 年末に日経平均4万3000円■谷道健太19 トランプ氏は防衛、金融に追い風 日経平均は4.6万円以上目指す■広木隆20 政治関連銘柄 トランプ政策で資源に強い三井物産 「103万円の壁」関連でタイミー■天海源一郎22 日本のトランプ銘柄 スズキ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事