冷酷な浪人とうり二つの町人 仁左衛門が「一世一代」の二役 小玉祥子
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舞台 霊験亀山鉾 亀山の仇討
片岡仁左衛門が東京・歌舞伎座の「二月大歌舞伎」で、これが最後を意味する「一世一代」と銘打って「霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)亀山の仇討」に主演し、藤田水右衛門と八郎兵衛の二役を勤める。
「東海道四谷怪談」「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」の作者である四世鶴屋南北作品。水右衛門は自身が闇討ちした石井右内の弟兵介との敵討ちの果たし合いに際し、兵介に毒を盛って手にかける。右内の養子、源之丞(げんのじょう)と妻のお松、源之丞の恋人の芸者おつま、源之丞の家臣、袖介らは右内と兵介の無念を晴らすべく水右衛門を追う。追う側、追われる側の緊迫した駆け引きが全編を貫く。
水右衛門は人を殺しても平然としている冷酷な浪人で、石井家ゆかりの人々を次々と手にかける。もうひと役の八郎兵衛は町人で水右衛門とうり二つだ。「弥勒町丹波屋(みろくまちたんばや)の場」で、おつまは八郎兵衛を水右衛門と誤解して接近するが、そこに本物の水右衛門が居合わせたので、間違いに気づいて拒絶する。
「安倍川返り討の場」で水右衛門は源之丞をたくらみにはめて惨殺。「中島村焼場の場」で、八郎兵衛は源之丞を供養するおつまを恋の遺恨から殺害しようとするが抵抗されて斬られる。そのおつまも棺桶の中から現れた水右衛門に殺害される。この時に水右衛門は自分が殺した人間を指折り数えてほくそ笑む。仁左衛門演じる水右衛門の…
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週刊エコノミスト
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