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日本のマイナス金利脱却はまだ遠い 渡辺浩志

 新型コロナウイルス禍やウクライナ危機は世界のインフレを加速させた。これを退治すべく、昨年春先から主要国が金融引き締めを急いでいる。

 だが、足元では利上げの効果で世界景気が減速し、原油や食料などの1次産品価格が下落している。これにより、モノのインフレは今年前半にも世界的に正常化する公算が大きい。その結果、各国の賃金上昇率の違いを背景とするサービスのインフレ格差が浮き彫りとなる(図)。

 米国では人手不足の賃金上昇でサービス物価が上昇しており、当面3%超のインフレが続く公算だ。一方、日本では賃金の低迷でサービス物価は低空飛行を続けており、モノの値段が落ち着く年後半には、インフレ率は1%を割り込もう。欧州は労働組合が強いため、インフレ下では無理な賃上げ要求が高まりやすく、それがサービス物価を押し上げる。

 インフレ退治にどこまでの利上げが必要になるかは、インフレの性質によって異なる。インフレが需要の強さを背景とするディマンドプル型なのか、供給要因に由来するコストプッシュ型なのかだ。その際、政策金利の“分水嶺(ぶんすいれい)”となるのは、中立金利と名目潜在成長率だ。

 中立金利とは、景気を熱しも冷やしもしない金利水準であり、米国は3%弱、欧州は2%弱といわれる。それを上回る利上げが行われれば、景気は減速し、インフレにもブレーキが掛かる。

 他方、名目潜在成長率は一国の実物資産から得られる投資リタ…

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週刊エコノミスト

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