日銀の対応で見えたイールドカーブコントロールの限界 愛宕伸康
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日本銀行は2022年12月、異次元緩和の積極的な国債買い入れで国債のイールドカーブがゆがみ、市場機能が低下したとして、10年金利の上昇を0.5%まで容認する措置をとった。
ゆがみは解消せず、市場は1月も更なる上昇が容認されるのではないかと身構えたが、日銀はそれをしなかった。一見ちぐはぐに見える日銀の行動だが、金融政策決定会合(MPM)の声明文に即して整理するとわかりやすい。
声明文には、MPMで決定した政策を金融市場局に実行させる具体的な指示が記載される。イールドカーブ・コントロール(YCC)については「金融市場調節方針」と「長短金利操作の運用」の二つに分かれ、前者は政策金利が、後者はそれを円滑に実現させるための運用について書かれている(表)。日銀は物価目標(消費者物価上昇率2%)は実現しないと判断しているので、「金融市場調節方針」に定められた政策金利は変えられない。これは12月も1月も共通している。
「長短金利操作の運用」も実は同じである。12月MPMで10年金利の上昇が容認されたのに1月MPMではそれをしなかったため、対応が異なるとの印象が強いが、実は1月も共通担保オペを拡充するという運用面での措置を講じている。それにより低利の資金を金融機関に供給し、国債購入を促すことによってイールドカーブのゆがみを解消させようという試みだ。日銀として、「金融市場調節方針」は変更せず、「長短金…
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週刊エコノミスト
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