自己資本以上にのれん積み上がるアサヒGHD 松田遼
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主要企業50社における「のれん」の財務上への影響を確認する。国際会計基準(IFRS)ではのれんの定時償却が不要であることから、その減損リスクが懸念される。
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近年、アサヒビールを傘下に置くアサヒグループホールディングス(GHD)や日本たばこ産業(JT)が、企業買収(M&A)をテコに事業拡大を図っている。買収される側の企業(被買収企業)の買収価格はその純資産を上回り、その差額が「のれん」として買収する側の企業(買収企業)のバランスシート(貸借対照表)の資産として計上される。
のれんが表すものは、被買収企業の将来収益力といえるが、不確かな将来を対象としていることから、その会計上の扱いが問題となる。つまり、のれんの減価償却(減損)の有無だ。日本の会計基準では、のれんを買収時に一度に償却するのではなく、一定期間にわたって減価償却を行うことになる。そのため負担は長期にわたるものの、各年における負担は比較的抑えられる。
一方で、IFRSでは、のれんの定期的な減価償却は行わないが、被買収企業の収益力が落ちると、それに応じてのれんを減損する必要が生じる。のれん減損は一時的とはいえ、その額が巨額となり、買収企業の財務に与える影響は小さくない。特にグローバルに事業展開している日本企業では、IFRSを適用する企業が増えてきており、のれん減損リスクが注目されるようになった。
トップはソフトバンクG
そこで各社の決算短信に基づき、2022年9月期(一部8月期)の、のれん金額が大きい30社をみた(対象条件の詳細は表注釈、表の拡大はこちら)。
トップは、ソフトバンクグループ(SBG)の5兆4592億円。次いで武田薬品工業の4兆9946億円となった。両社ともに、積極的なM&Aでよく知られる。続く3位のアサヒGHDもグローバル展開にM&Aをアク…
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週刊エコノミスト
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