つくばエクスプレス“快走” 沿線に人口増加率1位と2位の市 櫻井幸雄
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開業からまもなく18年。子育て世代を引きつけ、沿線人口が急増中だ。
流山市は6年連続で人口増加率トップ
2022年1月1日時点の調査で、千葉県流山市は人口増加率で、6年連続で市として全国トップを記録した。06年に15万2791人だった同市の人口は、22年には20万5439人に増加。16年間で5万人以上増えた。
急速な人口増の理由として「つくばエクスプレス(TX)」の開業(05年8月)の効果があったことは間違いない。流山市で人口が増加し始めた時期とほぼ重なる。
流山市以外でも、TX沿線に位置する自治体では埼玉県八潮市や同三郷市、千葉県柏市、茨城県つくば市で人口が増えている。つくば市の人口増加率は全国2位(22年1月)。TXによって沿線が活性化し、沿線各自治体の人口が増加。それに伴い、同沿線では開業以降、絶え間なく新築分譲マンションがつくり続けられた。
知名度不足で割安に
どこで、どのくらいの価格水準のマンションが販売されてきたのかを年代別で分類したのが表だ。
【第1期(04~06年)】TX沿線でマンション分譲が始まったのは、開業前年の04年から。当時、「ザ・フォレストレジデンス」と「三郷中央センターマークス」が注目された。いずれも、「近・広・安」の三拍子がそろい、駅に近い場所で80平方メートル前後の3LDKが3000万円台だったのである。06年ごろまでは、割安な新築マンションが次々に発売された。それは、開通間もない沿線では、魅力的なマンションにしないと、購入者が振り向いてくれないためだ。
TXは、1994年に起工式を行い、わずか11年で開業。新規の鉄道計画としては異例の迅速さだ。その弊害として、開業しても世間一般の認知度がなかなか上がらなかったし、街のインフラ整備が遅れたという事態も生じた。
例えば、三郷中央センターマークスの販売センターは三郷中央駅を出て道路を渡った先にあったのだが、開業後しばらくは信号も横断歩道もなかった。
そのような状況では、「これから大きく発展する街です」と説明されても、多くの購入者は腰が引けるものだ。その腰を持ち上げるには近・広・安の三拍子がどうしても必要だったのである。
【第2期(07~10年)】07年以降10年くらいまでの第2期は若干売れ行きが鈍った時期となる。マンション価格はまだ安く、2LDK、3LDKが2000万円前後で購入できた。当時としても格安なマンションが分譲されたのだが、第1期のマンションと比べると、駅からの距離が増した。そのために販売に苦労するケースも出た時期でもある。
08年にはリーマン・ショックが起きて、新築マンションの売れ行きが首都園全域で鈍化。その時期にあたることも、07~10年にかけてTX沿線で新築マンションの販売が長期化した理由となる。
【第3期(12~17年)】現在のマンション人気が始まった12年以降、TX沿線では、販売好調のマンションが増えた。特に、駅から徒歩5分以内で、3LDKが4000万円台で購入可能なマンションは軒並み売れ行き好調に。東京23区内での新築マンション価格が高騰し、6000万円台、7000万円台の3LDKが当たり前になった影響による。都心部から離れても、駅から徒歩5分以内なら許容範囲であり、3LDKが5000万円未満ならば買いたいという人が増えたわけだ。
ただし、「近さ」と「安さ」を実現するため、「広さ」は求めにくくなった。この時期から、TX沿線には70平方メートルに満たない3LDKが増えている。
【第4期(19年~現在)】19年以降も首都圏ではマンション価格の上昇が止まらず、首都…
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週刊エコノミスト
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