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ウクライナ特需に即応できなかった米軍事企業 来年以降は生産倍増も 竹内修

ロッキード・マーチンの「F16」。4500機以上が生産された(シンガポール空軍保有) 撮影:竹内修
ロッキード・マーチンの「F16」。4500機以上が生産された(シンガポール空軍保有) 撮影:竹内修

 米防衛産業が期待した「ウクライナ特需」は今のところ発生せず。株価は今がピークか。

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 2022年2月24日に、ロシアがウクライナに侵攻してから1年。日本を含めた自由主義陣営の政府や主要メディアは、ウクライナの首都キーウ陥落は時間の問題と考えていた。だが、侵攻から1年が経過した3月の時点でもキーウは陥落しておらずロシア連邦軍は苦戦を強いられている。ウクライナが善戦している最大の理由がウクライナ国民のロシアに対する強い抵抗の意思にあることは間違いないが、米国から供与された兵器も大いに貢献している。

 01年から21年まで続いたアフガニスタンでの対テロ戦争、03年から08年イラクでの軍事作戦は第二次世界大戦などに比べると兵器の損耗は少なく、冷戦期に調達した兵器のストックでまかなえたため、戦闘機や戦車など主要な兵器の開発と生産を手がける企業の業績は芳しいものではないのが実情だ。

慎重な防衛産業

 23年2月1日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)は、米国のウクライナに対する軍事支援パッケージは270億ドル(約3兆6000億円)を超えていると報じた。

 また、国連安保理の常任理事国であるロシアが国連加盟国であるウクライナを侵略したことに危機感を強めたNATO(北大西洋条約機構)加盟国や日本なども、米国製兵器の導入により防衛力を急速に強化する方針を打ち出している。

 ロシアのウクライナ侵攻後2週間で、米国を代表する防衛企業のロッキード・マーチンの株価は約20%上昇。他の防衛企業の株価も同様に急騰し、世界の防衛関連株は22年に32%も跳ね上がった。こうした状況が米国の防衛産業にとって福音であることは間違いないが、WSJは、23年2月の時点で防衛企業の国防総省からの受注総額は100億ドル(1兆3500億円)に満たないと報じている。

 米国がウクライナに供与した多連装ロケットランチャー「ハイマース」は、米軍の在庫から割譲されたが、米政府が22年9月に追加供与を表明したハイマースは引き渡しまでに数年を要する見込みで、同社は22年1月に、年間売上高が2年連続で減少するとの見通しを示した。ロシアのウクライナ侵攻まで、大規模な武力紛争が起きる可能性が高くなかったことから、メーカーのロッキード・マーチンは生産を縮小しており、部品やコンポーネントを製造するサプライチェーンの中には製造から撤退した企業も少なくなかった。

 ウクライナの序盤の善戦の立役者となった携帯地対空ミサイル「スティンガー」と、携帯対戦車ミサイルの「ジャベリン」も米軍や同盟国軍の在庫を割譲す…

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