FRBの引き締めで年央まで続く調整局面こそ買い場 馬渕治好
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金融引き締めで足元の株価は軟調だが、その後は企業業績の回復を織り込む展開が予想される。
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米国の株価は、今年前半は調整色を強めようが、年後半には回復し、長期的にも世界をリードする株価上昇が見込まれる。
今年前半に米国株下落を見込む最大の要因は、米国経済が後退期入りし、企業業績も減益に陥ると懸念されることだ。そうした景気と業績の悪化は、これからも続く米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めによるものだ。
最近のインフレ高進は、2020年来のコロナ禍による生産及び物流活動の混乱や、ロシアのウクライナ侵攻に伴う小麦生産の落ち込みやロシアからのエネルギー調達の制約など、供給側の要因が大きく、そうした供給制約に対しFRBが直接できることは何もない。中央銀行によるインフレ対策として可能なことは、金融引き締めによって景気を悪化させ、家計や企業の購買を減退させることによって、モノやサービスの需給面から物価を抑え込むだけだ。すなわち「景気を犠牲にしてインフレを抑える」ということになる。
金融政策については、政策金利の動向が関心を集めている。22年初めは政策金利は0.0〜0.25%の範囲に誘導され、それが「ゼロ金利政策」と呼ばれた。その後の利上げにより、今年2月初には政策金利は4.5〜4.75%に達し、中立金利(景気を温めも冷やしもしない分岐点となる金利水準)とされる2.5%を大きく超えて、景気抑制効果を発揮している。インフレ率は昨年にピークアウトはしているものの、十分に低下するには時間を要するため、金融引き締めによる景気抑制策はまだ続かざるを得まい。現時点でFRBは、今年末の政策金利として5.0〜5.25%を見込んでいる。
金利水準だけではなく、資金量にも注目すべきだろう(図1)。FRBは量的緩和(QE)を3回行ったあと、新型コロナウイルス感染症の流行による景気落ち込みに対応するため、20〜21年にも資金供給を行った。それぞれの期間でマネタリーベース(中央銀行が散布する資金量)の前年比は高まったが、足元ではFRBは量的引き締めを進め、前年比はマイナスに転じている。
史上最低のマネーの伸び
経済全体に出回っている資金量を測る指標の一つであるM2は、量的引き締めの効果に加え、コロナ対策としての米政府の資金散布(家計向け補助金や失業保険給付金の上乗せなど)が一巡したため、直近で前年比マイナスに陥っている。M2が前年比で減少するのは、この統計が始まった1959年1月以来史上初のことだ。空前の資金減少にもかかわらず、今後の米国経済が拡大し株価が上昇していくとは、極めて見込みにくい。
実際の企業収益については、S&P500指数採用企業の1株当たり利益は、決算発表が終わった昨年10〜12月期について、前年比3.6%の減益となっている。アナリスト…
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週刊エコノミスト
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