プライム暫定上場の8割が基準未達 スタンダード市場移行の道も 森下千鶴
有料記事
東証再編に伴って暫定的にプライム市場に上場した企業は少なくないが、今後は上場基準達成へ厳しい道のりが待つ。
>>特集「日本株の大逆襲」はこちら
東京証券取引所は1月30日、2022年4月の市場再編の際に、新市場の上場基準に達していなくても暫定的に希望する市場への上場を認めていた経過措置について、25年3月以降に順次終了することを発表した。これまでは、経過措置を「当分の間」として終了時期は明示されず、市場再編で明確にしたはずの上場基準の形骸化が懸念されていた。具体的な取り扱いを東証が発表したことは市場再編における大きな一歩となった。
東証は、経過措置の終了時期の明確化に伴い、プライム市場に上場する旧東証1部上場企業に限り、23年4月1日〜9月29日の6カ月間は審査なしでスタンダード市場へ移行できる救済措置を設けた。期間中にスタンダード市場を選択した企業は、同10月20日にスタンダード市場への変更が実施される予定である(図1)。
現時点において上場基準未達の企業は、プライム市場に残留するため取り組みを進めるのか、現実的にこの救済措置を利用してスタンダード市場へ移行するのか判断を迫られることになる。基準達成に向けて着実に取り組みを進めている企業がある一方、上場基準との乖離(かいり)が大きく、基準達成が難しい企業も少なくない。
また、上場基準は長期的かつ定常的に上回る必要があるため、現時点で乖離が大きい企業は余裕を持った基準達成が必要となり、かなりハードルが高いように思われる。それゆえに、プライム市場に残ることをあきらめ、救済措置を利用してスタンダード市場への移行を選択する企業は相当数出てくるのではないかと見込まれる。
「流通時価総額」が最多
プライム市場の上場基準に適合するための適合計画書を提出し、経過措置が適用されたプライム市場上場会社は317社あったが、23年2月末までに5社が上場廃止になった。残りの312社について開示されている適合計画書を確認すると、現時点では62社が基準を達成(会社発表の適合見込みを含む)しており、約8割に当たる250社が上場基準を達成していない状況である。
項目別に上場基準に対する進捗(しんちょく)状況について適合計画書を確認すると、流通株式時価総額は250社中、適合が28社、未達が222社▽流通株式比率は53社中、適合が15社、未達が38社▽売買代金は90社中、適合が36社、未達が54社──となっていた。流通株式時価総額が未達という企業が最も多くなっている。売買代金については適合した企業が多かった。
今回の東証の発表では、3月期決算企業であれば、1年間の改善期間を含めて実質的な猶予期限が26年3月と定められた。ただし、東証は経過措置の適用期間を「当分の間」として期限を明示していなかったことから、すでに提出した適合計画書で26年3月以降に適合するとの計画期間を定めていた企業については、計画期間における適合状況を確認するまで、監理銘柄として市場に残ることができる見込みである。
実際に26年3月より後に計画期間を設けている企業は、流通株式…
残り1108文字(全文2408文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める