投資・運用

プライム基準未達企業 1割が情報開示を強める 伊藤歩

決算説明資料を開示するようになった企業も少なくない
決算説明資料を開示するようになった企業も少なくない

 プライム上場企業の経過措置銘柄について、東証再編前後で企業の情報開示姿勢の変化を調べてみた。

>>特集「日本株の大逆襲」はこちら

 東証の市場再編から間もなく1年。中でも最上位のプライム市場に関しては「骨抜き」「看板の付け替え」との批判は根強い。そもそもの上場基準が甘すぎるうえ、旧東証1部上場企業の8割以上の横滑りを許す経過措置も緩すぎるというわけだ。

 こういった批判は、主に機関投資家が発信源とされる。東証が1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場を再編、国際的に通用する市場に底上げしようとする議論を始めた2018年当時、指摘されたのが東証1部の肥大化だ。4市場合計で約3800社あった上場会社のうち、実に半分以上が最上位の東証1部。マザーズからであれば、時価総額が40億円でも昇格可能とあって、かなり小規模な企業も多数含まれていた。

 つまり、機関投資家の投資対象たりえない企業が多数、東証1部に上場し、それがTOPIX(東証株価指数)の対象銘柄になっているということが問題視された。このため、日本取引所グループの清田瞭CEOが、18年10月29日の定例会見で、「市場構造の在り方等に関する懇談会」の設置を表明し、「あまり時間をかけるものではない」とも発言した。

 この後、「(新たな市場区分での最上位市場の)足切りライン時価総額で1000億円」「最上位市場残留は620社」「東証は(19年)3月末までに結論を出す」といった報道が相次いだ。議論が始まって半年もたたないうちに、いきなり降格の憂き目に遭う東証1部企業が1500社も出るとあって、大騒ぎになったのだ。

 結局は金融庁が審議会を設置し、時間をかけて議論を深め、激変緩和措置も入れた。その結果、市場再編はさんざんな評価を受ける結果になったのだが、一連の騒動がショック療法となり、それまで希薄だった投資家向けの情報開示をはじめ、説明責任を強く自覚する上場企業が増える効果をもたらしたことは間違いない。

27社に「変化の跡」

 新市場に移行した昨年4月4日時点で、旧東証1部からプライム市場に移行した1842社のうち、プライムの上場基準を満たさず、移行期間中の達成を目指すべく「上場維持基準の適合に向けた計画書」(以下、適合計画書)を提出した企業は295社ある。この295社について、開示姿勢の変化を定量的に捉えるにはどうしたらよいか。筆者は「決算短信」の1ページ目に記載されている「説明資料作成」と「決算説明会開催」の有無の欄の集計を試みた。

 上場企業は四半期ごとに貸借対照表や損益計算書などを掲載した決算短信を決まった様式で開示するが、通期決算…

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週刊エコノミスト

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