投資・運用

株主優待 株価安定効果あるが廃止の流れも 和島英樹

 日本独特の株主還元である株主優待。ただ、外国人投資家には不公平感が強い。

>>特集「日本株の大逆襲」はこちら

 東京証券取引所上場で株主優待を廃止する企業が増加傾向にある。日本では現在、上場企業約3900社のうち4割弱が株主優待を実施し、個人投資家の人気を集めている。ただ、株主優待の実施企業は2019年まではほぼ一貫して増加していたが、20年以降は頭打ちとなった。一方で、新規に導入する企業もある。

 ここに来て株主優待を廃止する企業が増加した理由は大きく分けて二つある。株主還元の公平性を求める市場の流れと、22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編に伴って必要な株主数が減少したことだ。

 株主優待は個人投資家にはメリットがあるものの、機関投資家、とりわけ外国人投資家には不公平感が強い。投資信託など機関投資家は、株主優待で換金できるものは換金し、分配金などに充当する手間がかかる。海外籍の外国人投資家は優待を得られない。

 22年5月に株主優待の廃止を発表したオリックスは、当時の発表資料の中で「公平な株主還元のあり方という観点から慎重に検討を重ねた結果、株主優待制度については廃止し、配当等による利益還元に集約することとした」などとしている。JTなども同様だ。オリックスはカタログギフト方式の優待を実施していたが、郵送料の負担も大きかったとみられる。外国人保有比率の高い企業ほど「公平性」を意識せざるを得ない。

 一方、旧東証1部市場では株主数の規定が2000人以上だったが、再編されたプライム市場では800人以上に緩和された。上場維持基準をクリアするために、個人株主を引き付ける必要性が薄らいだ。手っ取り早く株主数を増やすには、現金に準じる「QUOカード」を優待にしていたところが少なからずあり、取りやめる企業が増加した。市場関係者によれば、22年12月~23年2月の間だけでもQUOカード優待…

残り826文字(全文1626文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事