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投資・運用 日本株の大逆襲

上場基準を満たしても実質が伴わないガバナンスの闇 遠藤元一

前会長らが贈賄罪で起訴された五輪汚職事件について、記者会見で頭を下げるKADOKAWAの夏野剛社長(中央)ら
前会長らが贈賄罪で起訴された五輪汚職事件について、記者会見で頭を下げるKADOKAWAの夏野剛社長(中央)ら

 東証再編は企業のガバナンスの向上も目的だった。それにもかかわらず、再編後も企業のガバナンスを巡る問題は頻発している。

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 東証が2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編して1年が経過した。市場再編は、上場企業が自社に最も適した環境で企業価値向上を果たしていくための基盤整備を目的としている。その重要な要素として「ガバナンス」(企業統治)も重視されている。各市場のコンセプトに応じたガバナンスコード(企業統治の指針)を設けることで、投資家をより意識したガバナンスの進展を目指している。

 市場再編を前に、21年6月に行われたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改定では、新しい市場区分それぞれで投資家から期待されるガバナンスの内容を示す意義がある。特にプライム市場については、より高いガバナンス水準が求められ、グローバルな機関投資家の目線が強く意識されている。

 では新市場区分への移行は、ガバナンス改革にどのように寄与し、企業不祥事に何らかの影響を及ぼしたのだろうか。

 東京商工リサーチが今年1月に公表した「不適切な会計・経理の開示企業」調査によると、22年に不適切会計を開示した件数は、上場企業数が55社(前年比7.8%増)、件数も55件(同)と前年を上回り、また、第三者委員会を設置した企業数も減少していない。ガバナンス改革が本格的に進展した15年以降を見ると、不祥事が絶え間なく発生する傾向は変わっておらず、ガバナンス改革は不祥事の抑止にはつながっていないのだ。

 上場企業はガバナンス改革に伴い、ROE(株主資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)など、財務指標の改善を企業経営の重要な課題として取り組んでいるが、期待されていた成果を実現できていない。直近では、サステナビリティー(持続可能性)情報や気候変動リスクに対する対応などを含め、非財務に関わる課題にも取り組まざるを得ず、限られた経営資源の配分に窮する状況に陥っている。不祥事の未然防止や早期発見の体制を十分に整備する余裕があるとは考えにくく、こうした状況は企業不祥事の原因となりうる。

法務部門から指摘も

 22年に発生した不祥事のうち、耳目を集めた2件を具体的に取り上げよう。

 第一は、東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件である。前会長が贈賄罪で昨年10月に起訴されたプライム市場上場の出版大手、KADOKAWAでは今年1月下旬、ガバナンス検証委員会が調査報告書を公表しており、経緯などを知るうえで興味深い。

 この調査報告書によれば、前会長が組織委員会元理事(みなし公務員)の提案に応じた資金の支払いが、贈賄に該当する可能性があることを法務部門から事前に指摘されていたという。それにもかかわらず、資金提供は実行されたことが記されている。前会長がなぜ暴走したかはいまだ明…

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