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私立大学が直面するもう一つの「2025年問題」

18歳人口は年々減っている(写真は昨年の早稲田大の入学式)
18歳人口は年々減っている(写真は昨年の早稲田大の入学式)

 私立大学の経営が変革を迫られている。昨年の出生数が80万人を割るなど急激な少子化が進んでおり、「大学過剰時代」がやってくることは歴然としている。生き残りをかけた経営改革を迫られているのだが、伝統校ほど「素人」と言える学者が運営の中心を担うなど「経営不在」が深刻な問題になっている。そんな中で、私立大学をもう一つの「2025年問題」が襲おうとしている。

 一般に2025年問題とは、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本社会の「超高齢化」によって社会システムに様々な歪みが生じることを指す。医療費や介護費用の増大による現役世代の負担増や、地域コミュニティーの崩壊などが具体的な事象として指摘されている。私立大学の場合、つい数年前まで120万人いた入学年次に当たる「18歳人口」がすでに110万人に減少しており、さらにこれが激減していくことが大きな問題になっている。

減り続ける18歳人口

 もっともここ10年は18歳人口が110万人から100万人に向けて漸減していく状況のため、大学の教職員の危機感はまだまだ薄い。しかし、2022年に生まれた子どもが大学を受ける2040年には80万人を割ることがはっきりしており、いずれ大学が過剰になることは「確定」しているわけだ。

 こうした状況の中で、中下位の大学ほど危機感は強く、生き残りをかけた改革に着手し始めている。中にはすでに定員割れが続いて学校閉鎖を決断するところも出始めた。このほど恵泉女学園大学が大学と大学院の閉学を決め、2024年度以降の学生募集を停止するとしたが、運営する学校法人恵泉女学園には中学・高校もあり、こちらに経営を集中することで、大学を早めに閉鎖することとしたと見られる。

 また、政府の教育未来創造会議などが提言を通じて、定員割れの大学への補助金の引き下げや、経営不振の学校法人の統廃合などを推進することを示しており、今後も淘汰(とうた)が進んでいくことになりそうだ。国公立大学はすでに地域での統合などを進めており、人口減少に対して数を絞っていくことが国の政策になっている。

求められるガバナンス強化

 そんな中で、私立大学の運営に新たなハードルが設けられることになる。私立学校法の改正が今国会で通過する見通しで、大学経営を巡るガバナンスの強化が求められる。日本大学の理事長を巡る経営不祥事など、私立大学のスキャンダルが相次いでいることも、ガバナンス強化を求められた要因だ。具体的には公認会計士による会計監査の制度化や、理事長など役員による特別背任や投機取引、贈収賄などについての罰則の整備などが柱になっている。

 その中でも重要なのが、評議員会と理事会の機能整備だ。理事長の暴走を防ぐために、理事長選任を理事会で行うことを明文化し、評議員会には理事会へのけん制機能を持たせることとした。これら一連の改正私学法の施行が、今国会で法…

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