教養・歴史

“諦め世代”の私でも「やればできる」を実感した 馬渕磨理子

「諦め世代」──。私たちデフレ世代を自虐的にいえば、こうなるかもしれない。インフレ(物価上昇)や金利上昇、実感を伴った景気がいい時代を知らない世代にとって、「今のままでいいや」とか、「特段変わる必要性を感じない」といった、よくいえば、現状肯定的、悪くいえば、どうせ何をやっても変わらないという諦観が心のどこかに潜んでいる気がする。

>>特集「バブル世代vs.デフレ世代」はこちら

 しかし、そういう時代だからこそ少し頑張れば、評価してもらえる。コツコツと少しずつでも努力を続ける姿を誰かが見てくれるチャンスがあると私は信じている。

 そんなふうにいうと、私が超ポジティブな人間に見えるかもしれないが、そうではない。1984年生まれの私は、2浪して大学院まで進学。修了したのは2011年のリーマン・ショック後と東日本大震災の就職氷河期だった。銀行や商社など大手企業数十社すべての採用試験に落ちた。ようやく見つかったのが、大阪の医療法人だった。

 当時としては珍しく最新の在宅医療サービスを展開する医療法人で、公共政策を専攻していた私は、ここでITを活用した在宅医療の重要性を政策提言する仕事を始めた。ところが、医療業界の壁は厚く、まるで相手にされずすぐに頓挫。これからどうすればいいかと悩んでいたところ、医療法人のトップが「30歳を前に、大学院まで出た頭でっかちな女性は、どこも使いにくいわな。自分で勉強してやりたいことをするしかないやろ」と、私の性格を見透かされたように言われ、ハッとした。

 この言葉で気持ちが振っ切れた。人が生きていくうえで、欠かせない経済・金融の仕事をしようと、10年間、無我夢中で突っ走った結果、テレビや新聞、雑誌から声を掛けられるようになった。諦め世代の私たちでも努力すればどうにかなるというのは、実は自分自身の体験でもある。

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