経済・企業

年内にコロナ前の水準へ 受け入れ体制整備が急務 鳥海高太朗

銀座に外国人観光客が戻ってきた 筆者撮影
銀座に外国人観光客が戻ってきた 筆者撮影

 昨年の水際対策の大幅緩和以降、インバウンドが回復してきている。しかし急激な需要の回復に空港やホテルの受け入れ態勢が追い付いていない。

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 想定をはるかに超えるペースでインバウンド(訪日外国人観光客)が回復している。

 新型コロナウイルス感染症発生前の2019年には年間3188万人の外国人入国者を記録したが、コロナ禍で急減し、最も少ない21年は24万5862人と19年比で99.2%減となった。月間ベースで最も少なかった20年5月は月間1663人だった。日本は諸外国と比べて入国制限をしている期間が長く、コロナ前にビザなしで入国できた国からの旅行者も、20年春から22年10月10日までの約2年半の間はビザなしでの日本への入国は認められなかった。

 そんな中、22年10月11日の水際対策の大幅緩和で、コロナ前にビザなしで入国できた国からの観光客が再びビザなしで入国できるようになった。そして円安や物価安も追い風にインバウンドが本格的に復活した。23年1月はコロナ前の19年比55.7%の月間149万7300人を記録、2月も同56.6%までインバウンドは回復している。

中国人抜きで6割回復

 国別で入国者が急増しているのは韓国、米国、ベトナム。東京や大阪など都市部を中心にインバウンドが急回復している。特に円安の恩恵を最大限受けている米国からの旅行者の高級温泉旅館の利用も目立つ。

 また韓国からの観光客は、韓国のLCC(格安航空会社)が相次いで日本路線を再開させ、航空券自体も割安で若者を中心に3年以上ぶりの日本を満喫している光景が見られる。韓国については19年後半から徴用工問題もあって日韓関係が冷え込み、韓国人の訪日旅行者も大きく減らしていたが、韓国の政権が代わったこと、徴用工問題が前進したことに加え、若者を中心とした日本ブームが過熱したことで多くの韓国人が日本を訪れている。

 ここで注目したいのは中国の動向である。今年に入り、1月8日から中国は個人での海外旅行を解禁し、パスポートの新規発給などを再開するとともに、海外から中国へ戻る場合の中国入国時の検査が撤廃され、中国へ向かう便が出発する48時間以内のPCR検査のみとなった。

 しかし、日本政府が中国からの入国者全員に対し、22年12月30日以降、日本到着時に入国時検査を実施し、さらに増便も認めなかったこと、富裕層で日本入国に必要なビザを持っている人などに限定されたことで、1月・2月共に中国人の入国者は19年の同月比でわずか5%にとどまった。現在は増便が認められるようになったが、日本への団体旅行が認められておらず、本格的な回復には至っていない。

 中国人観光客は戻っていないがインバウンド市場は元気だ。コロナ前はインバウンドの約3割を占めていた中国が回復していないが、今年に入ってすぐにコロナ前の6割弱まで…

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週刊エコノミスト

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