鍵を握る高付加価値旅行 体験価値をマネタイズ(編集部)
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インバウンドを観光産業の成長につなげるには、顧客単価を上げる取り組みが重要になってくる。そこで注目されているのが、高付加価値旅行だ。
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インバウンド(訪日外国人観光客)が順調に回復していく中で、今後、経済へのインパクトという観点では、旅行者の消費額の増加にも取り組まなければいけない。もともと政府目標では訪日客数に加えて消費額も掲げられていたが、どちらかというと人数に依拠した目標であり、訪日客数の動向に注目が集まっていたという。インバウンドが観光産業の成長のけん引役となるためには、「単に外国人観光客に訪日してもらうだけでなく、しっかり消費してもらうことが重要となる」と日本政府観光局(JNTO)企画総室長の平野達也氏は語る。
リボーンやリトリート
訪日客の顧客単価を上げる取り組みが求められる中で、推進されているのが高付加価値旅行だ。JNTOによると、高付加価値旅行は、「航空券を除いて1回の訪日で1人当たりの消費額が100万円以上の旅行」と定義されている。1回100万円となると、仮に高級ホテルに10泊したとしても消費しきれない。連泊や長期滞在を前提とした上で、地域での体験で消費してもらう仕掛けが必要となる。
比較的分かりやすいのは、モノづくりと旅行を組み合わせたクラフトツーリズムだろう。旅行先で伝統工芸品の制作を体験してもらう。物によっては完成までに時間をかける場合、旅行者の長期滞在が必須となる。
JNTO市場横断プロモーション部次長の門脇啓太氏によると、高付加価値旅行者は、一般的に知的好奇心や探求心が非常に強い層であるととらえられているという。日本に来て、地域の伝統や文化、自然に触れるなどさまざまな体験を通して、自分の知識を深めたり、インスピレーションを受けたりすることで、新たな自分を見つけようとしている。
そうした人たちは「リボーン(再生)」や「リトリート(日々の疲れを癒やす過ごし方)」を求めている。そして立ち止まって自分を見つめ直す体験が、茶道や座禅など、日本の伝統文化にある。これらを通して、何か自分を変えたいと思っている人にきっかけ…
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週刊エコノミスト
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