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教養・歴史 これまでの/これからの100年

インタビュー「緩やかに崩壊しつつある社会と国家」マックス・プランク研究所 ヴォルフガング・シュトレーク名誉所長

グローバル化と民主主義はどこへ

 著書『時間かせぎの資本主義』などで鋭く資本主義の本質を洞察するドイツの社会学者、ヴォルフガング・シュトレーク。グローバル化した経済や民主主義がコロナ禍、ウクライナ戦争を経てどこに向かおうとしているのかを尋ねた。(聞き手・構成=福田直子・ドイツ在住ジャーナリスト)

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── 2021年の著書『グローバル化と民主主義のはざまで』(日本語版は未刊行)で伝えたかったことは何ですか。

■主題は、経済のグローバル化、資本主義、政治的なさまざまな組織が絡み合う中、独立国家、多民族国家など世界中の202カ国が異なる発展をしながら、大なり小なり資本主義社会に組み込まれ、「囲い込まれている」ことに対する思い違い、を考察することだ。これが本の根幹となるテーマだ。

 これほどまでに複雑化した世界で、異なる人々、さまざまな民族、内容が異なる民主主義が共存しながら、経済が求める目標に沿うよう、一人ひとりがその生活や社会の発展とダイナミックさに合わせていかなければならなくなった。特に1950年代から世界は加速度的に変化した。人類の歴史でこのように早く変化が訪れるとは誰も予測しなかった。私たちは目まぐるしく変化する世界経済のシステムの後追いをしている。

 抽象的な言い方だが、私たちが生きる現代社会が経済に合わせているような状況下で、私たちが求めることを希求することは難しくなった。まして、暴走する経済を今ある制度で制御することは難しい。19世紀の産業革命にもさかのぼって、古くて新しい問題だ。

 日本も19世紀、米国によって自由貿易圏に参加するよう開国を要求された。その後に続いたのが明治維新だ。日本が試みたことは、新世界に適応すると同時に、日本式の方法で日本の利益追求と独自の判断基準を守ることだった。そのために日本式資本主義が生まれた。他の国も同様な方法で資本主義社会の一員となった。異なる文化と歴史を持つ社会が、画一化されがちなグローバル化にひたすら適応しなければならなかった。

コロナ禍というコスト

── 経済のグローバル化と軌を一にするように、新型コロナウイルスもあっという間に世界中へ拡散しました。

■コロナ禍はグローバル化による「隠れたコスト」といえる。いわゆる「経済の国際化」は良いことばかりではなく「副作用」を伴っていたわけだ。「世界が国際化」したということは、社会に利益をもたらすとともに、害をももたらした。

 ヨーロッパで1500年前に最初の感染症が起こった時、感染拡大までにかなりの時間を要した。それが今では誰でも飛行機で世界のどこへでも行くことができ、中国の内陸部で発生したウイルスが2日後には欧米で見つかるということが起きた。では私たちがその危険な感染症に何ができるか。グローバル化の対価として、コストが高くつくことをこのコロナ禍で経験した。

 しかし、グローバル化で豊かになった者たちがコロナ禍のコストを支払ったかというとそうではない。ここに古くて新しい問題がある。企業はグローバル化によって生み出されたマイナスのコストを「外部化」して自分たちではなく、社会にそのコストを払わせている。振り返ってみれば、簡単に広がってしまう感染症がどれほど「高くついた」か、私たちは今回、実感せざるを得なかった。経済学者のカール・ポランニー(1886〜1964)は20世紀初めごろ、第一次世界大戦前から第二次世界大戦後までの社会生活と経済生活の発展と変遷、社会と資本主義間のあつれきを描き、疑問を提示した。歴史を振り返ると、「私たちが経済の変…

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