マンション価格が都心と郊外で二極化する事情 榊淳司
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マンション市場の実態は供給過剰。格差社会を反映し、都市中心部と郊外で二極化進む。
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4月18日、マンション業界に驚きのニュースが入った。不動産経済研究所が発表した今年3月の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション1戸当たりの平均発売価格が、前年同月比で2.2倍の1億4360万円となったのだ。単月で初めて1億円を突破した。ただし、これは「三田ガーデンヒルズ」という、平均価格4億円台の都心高額物件が発売された影響が大きい。とはいえ、1億円をやすやすと超えてしまった。
残念ながら、新築マンションの販売価格はまだまだ上がる可能性がある。その理由は、新築マンションの価格はコスト積み上げ方式で決まるからだ。主要なコストは土地購入代金と建築費で、その両方が現在も高騰を続けている。特にここ2年ほどで激しく値上がりしたのは建築費だ。
あるデベロッパーの仕入れ担当者は著者の取材に対して「この1年で2割は値上がりした」と語った。もちろん、都心の土地価格も下がる気配はない。最近はインバウンドが急速に回復しており、新型コロナウイルス感染症の拡大でしばらく姿が見えなくなっていた「ホテル業者」も、復活しているのではないか。彼らはコロナ前まで、マンションデベロッパーよりも高く土地を買っていた。
多い「転売目的」
土地の価格が高騰し、建築コストが上昇すれば、新築マンションの価格も上げざるを得ない。問題は、果たしてそれで売れるかどうかということだ。答えは「都心では売れている」。前述の三田ガーデンヒルズは超高額であるにもかかわらず、好調な販売を続けている。2021年の東京オリンピック選手村跡地の「晴海フラッグ」も、タワー棟が売り出されたが、依然として好調な売れ行きで、いずれもその好調さにかげりは見られない。
ただし、都心のマンション市場には他では見られない特徴がある。それは「実需での購入が少ない」という点だ。自分が住むために買うのではなく、値上がりによる転売狙いだったり、相続税対策であるケースが多い。特に晴海フラッグは、転売狙いのセミプロたちが一人で何十もの住戸に登録しているケースがざらにある。それが、あの高倍率につながっているのだ。
郊外に目を移すと、かなり様相が異なってくる。売れていないのだ。郊外でも新築マンションは値上がりしているが、都心ほどではな…
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週刊エコノミスト
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