テスラが狙う再エネ構想はVPPが軸 宮古島でも展開中 土方細秩子
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電気自動車(EV)大手テスラのトップのイーロン・マスク氏が「未来の収益の柱」と位置づけるエネルギー事業の姿が見えてきた。
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テスラが発表した、2023年第1四半期(1~3月)の財務報告書。EVによる利益率が昨年同期比で23%減となったが、より注目すべきは蓄電池によるエネルギー収入が15億2900万ドルと昨年同期比148%増で、所有する蓄電総量も3.9ギガワット時と、360%も成長している点だ。
マスクCEO(最高経営責任者)はかねてから「いずれエネルギー事業がテスラの収益の柱となる」と語っていた。売り上げ自体はまだテスラ全体の6%程度だが、今後再生可能エネルギー(再エネ)の需要が高まるにつれ、この数字は飛躍的に伸びる可能性がある。
仮想発電所
テスラのエネルギー事業は、電池の生産、太陽光パネルを使ったソーラールーフの販売、家庭用のパワーウオール、事業用の大型蓄電池、そして、それらとEVを合わせたVPP(仮想発電所)が中心となる。英国や豪州、米テキサス州で電力事業者としてのライセンスを取得し、テスラ・エナジーとしてサービスを提供している。
この中で特に注目が集まるのはVPPだ。太陽光や風力発電、バイオマスなどの再エネで得られた余剰電力を家庭用あるいは業務用蓄電システム、EVなどにため、インターネットで需給バランスを調整しながら必要時に送電網に還元して全体で一つの発電所のように運用する仕組みを指す。
VPPは、再エネの拡大を促すとともに、従来のピーカー発電所(電力逼迫(ひっぱく)の際に緊急で稼働する小型発電所)に置き換わるものとして広がりを見せている。EVメーカーであり電池生産、蓄電装置とソーラーパネルなどを総合的に作るテスラにとっても、VPPを活用したビジネスモデルは非常に相性がいいとされる。
現在テスラは、米国内ではテキサス州とカリフォルニア州でVPP事業を展開しているが、その伸びは急速だ。カリフォルニア州ではPG&E、SCE(サザン・カリフォルニア・エジソン)と提携するVPPへの参加世帯が今年4月の時点で6691世帯となり(図)、蓄電能力が100メガワットに達した。
今年1月と比較しても参加世帯は増えており、同州がソーラーパネルや蓄電システム設置に補助金を出していることから、この数字は今後さらに増えると予想されている。
膨大なデータ持つ強み
テスラの強みはVPPに必要な素材を提供するだけにとどまらない。世界最大級のEVメーカーとして、EVの走行と蓄電、充電に関する膨大なデータを持つとともに、電力の需給とVPPからの放電を最も効…
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週刊エコノミスト
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