韓国財界あげて“電池大国”へ 製鉄ポスコは「電池の川上から川下まで」 清水岳志
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韓国はリチウムイオン電池を国策産業と位置づけ、経済界を代表する製鉄最大手のポスコまで動き出した。
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韓国の主力産業で近年、蓄電池の存在感が高まっている。韓国政府が目指す2050年までのカーボンニュートラル政策や世界の完成車メーカーによる電動化へのシフトに対応するため、サムスンやLG、SKといった大手企業グループが世界シェアでも上位につけているからだ。
車載用リチウムイオン電池の出荷量でみると22年のランキング(韓国SNEリサーチ調べ)で中国の寧徳時代新能源科技(CATL)がシェア39.1%で首位、2位のLGエナジーソリューション(14.9%)は大差をつけられている。韓国は他にSKオンとサムスンSDIがそれぞれ5位、6位に入ったがトップ10の6社は中国勢だ。
中国除けばシェアトップ
しかし、中国勢の成績は世界最大のEV市場である中国の内需に支えられており、中国を除いた世界市場のシェアでは、LGエナジーがCATLを抜いて29.7%でトップに浮上する(表)。全体で3位だった比亜迪(BYD)も10位まで一気にランクを落とし、トップ5の3社が韓国勢だ。韓国の電池業界は「自分たちこそバッテリー市場のゲームメーカー」(地場メーカー首脳)と自負する。
ただし、好調のEV向けとは逆にエネルギー貯蔵システム(ESS)に使われる定置用蓄電池で韓国勢は伸び悩む。世界のESS市場で韓国のシェアは20年の55.0%から22年は14.8%と右肩下がり。LGエナジーは4位、サムスンSDIは5位と、BYD、EVEに抜かれた。
ESS市場での中国勢の躍進はなぜか。SNEリサーチは「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を用いた低価格攻勢を仕掛けている」と分析する。LFPは、発火リスクが低く安全性が高いのがメリットだ。従来のLFP電池はエネルギー密度が相対的に低いと評価されていたが、性能が改善し、コバルトを使用する電池の代わりとして需要は右肩上がりが続く。
韓国勢もLFP電池の開発に本腰を入れはじめた。LGエナジーとSKオンは、3月中旬の韓国最大級の電池見本市「インターバッテリー」でLFP電池の試作品を初公開。SKオンのLFP電池は、「従来の製品に比べて寒冷地での使用でも性能の劣化が少ない」(同社広報担当)という。LGエナジーは3月末、7.2兆ウォン(約7600億円)を投じて米アリゾナ州にESS用LFP電池などを生産する新工場建設を発表した。能力は43.3ギガワット時で、北米地域で展開する韓国の電池メーカーとしては最大規模となり、26年の量産開始を目指す。
米ブルームバーグNEFによると、ESS市場は今後、年平均23%の成長を遂げるという。韓国勢としては先行する中国との差を縮め、シェア奪還を目指したいところ。韓国政府も向こう4年で163兆ウォン(約18兆円)の国費を投じて、電池各社のLFP電池開発を後押しする計画を打ち出している。
ホンダと連携
急成長が見込まれる2次電池事業には、製鉄最大手のポスコグループも力を入れる。石炭を大量に消費する鉄鋼産業に限界を感じ…
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週刊エコノミスト
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