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“朝令暮改”のホンダF1復帰 社内のモチベーションも考慮 河村靖史
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ホンダが世界最高峰の自動車レースであるフォーミュラワン(F1)に2026年シーズンから復帰する。21年シーズンでの撤退を発表した際には当時社長だった八郷隆弘氏は「もう復帰することはない」と明言していたが、F1のルール変更や市場の変化、社内の問題などから「朝令暮改」とも見られる早さで復帰を決断した。
ホンダが15年に復帰した第4期の活動を21年シーズンで終了することを決めたのは、世界的に電気自動車(EV)シフトが加速する中、経営資源を電動化技術に集中するためだ。ホンダはF1などのモータースポーツ活動を「走る実験室」として市販車に応用できる新技術を試し、技術者を鍛える場として活用してきた。しかし、F1は年間数百億円のコストが必要な上に、EV時代に内燃機関の先進技術や技術者の需要は必要なくなる。
それが一転して復帰を決めたのはF1のルール変更がある。現行ルールではパワートレーン(駆動装置)の割合はエンジン80%、モーター20%だが、26年から50%ずつとなり、モーターや電池などの電動化技術がより重要になる。ここで培った技術が市販向けEVなどに生かせる。また、燃料も脱炭素化燃料である合成燃料となるが、航空機「ホンダジェット」や今後開発する「空飛ぶクルマ」関係の技術に応用できる。
ブランド力向上の効果も見込む。ホンダの主力市場である北米市場はこれまで、インディ500やNASCARが人気のモータースポーツだったが、動画配信の影響もありF1人気がうなぎ登りだ。F1でホンダの実績を示すことができれば、北米市場でのホンダブランドの向上が見込まれる。
厳しい戦いに
エンジニアのモチベーションにも期待している。ホンダは40年には販売する新車をEVと燃料電池車(FCV)だけとして、内燃機関車からの撤退を決めている。さらに、F1から撤退したこともあり、技術者の離職が深刻化している。以前は「エンジンの…
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週刊エコノミスト
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