国際・政治

G7コミュニケの対中“デリスキング”は日本経済に好影響 広木隆

 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)のコミュニケは対中関係について、「デカップリング(分断)」ではなく「デリスキング(リスク低減)」を基本方針とするという内容を盛り込んだ。「言い方を変えただけで内容は同じ」という向きもあるが、その見方は半分正しく、半分間違っているというのが筆者の意見だ。

 半分正しい、というのは実態が変わっていないからだ。G7はこれまでも中国とデカップリングなどしていなかった。最も激しく対立している米中の経済も、相互依存を強めている。米商務省が発表した貿易統計によると、2022年の対中輸出入額は4年ぶりに過去最高を更新し、6906億ドル(約96兆円)に達した。

 欧州はドイツ・フランスを筆頭に中国との緊密な結びつきを隠そうともしない。特にフランスのマクロン大統領は4月に国賓として訪中し、習近平国家主席から盛大な歓迎を受けた。

 デカップリングは「建前」で、どの国も「本音」では中国との結びつきを断つことなどできないことを分かっている。だから今回、表現を変えたのは実態を追認したに過ぎない、という見方ができるだろう。

 ただし、変化はある。米中貿易額は過去最高でも、中身は米中貿易戦争の影響が深刻化する前の18年と比べて大きく変化した。特に中国の輸入は米政府の輸出規制の影響を受け、航空機や宇宙関連、半導体や電子部品が大きく減った。完全なデカップリングはできないが、サプライチェーン(供給網)を再構築して対中依存度を下げることは必要だし、今後も進むだろう。

プラスの経済効果

 すでに米国が主導し、日本など14カ国が参加する新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が5月27日に開かれ、重要鉱物や半導体、医薬品などのサプライチェーンについて討議した。この動きは加速するだろう。

 明確な動きが出ているのが半導体分野だ。岸田文雄首相は広島サミット直前の5月18日、世…

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週刊エコノミスト

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